「私が死んだところで向こうは何のダメージも受けない」

「中学に入ったら、男らしくしないといじめられるよ」という母親の助言を受けて、ポケットに手を突っ込みながらガニ股で歩いていたにもかかわらず、いじめはどんどんエスカレートしていった。

 「歩いていたら足を引っかけられたり、蹴られたり、わざとぶつかってきたりは日常茶飯事。休み時間に掃除用具箱に閉じ込められ、横に倒されてゴロゴロ転がされたり、地面に白線を引く石灰を体育倉庫で口の中に押し込まれそうになったり。親に相談しようと思うけど、母は夜に商売をしていたので帰宅した時に私は寝ているし、私が起きている時間は母が寝ている。本心を押し殺して、なるべくバレないようにと自分を偽りながら生活しているのに(いじめられて)、いったい何のために生きているんだろうと。『生きていたってしょうがない』――そう覚悟した私は、自ら命を絶つことを何度も試みました。壁に頭を打ち付けて、血の味を感じながら意識がなくなるタイミングを待ったり、下を走るトラックめがけて歩道橋から飛び降りようとしたり……」

 自殺未遂を繰り返しながら、すんでのところではるなを思いとどまらせたのは、自分をいじめている相手への感情だったという。

 「私が死んだところで向こうは何のダメージも受けない。そして、そんなヤツらのために親を泣かせることになってしまう。だから、死ぬことは何の解決にもならないと、いじめに耐えながら生き抜くことを選んだんです」