芸能生活は、決して順風満帆といえるものではなく…
そして、そんなはるなに生きる希望を与えてくれる、ある救世主との出会いが待ち受けていた。
「母のお店のお客さんが、『賢ちゃんと同じような人たちがいるから』と、ショーパブへ連れていってくれたんです。そこで働いていたニューハーフのマキさんというお姉さんと出会って、こんな居場所があるんだって。マキさんは私に『テレビ見たよ。女の子の格好して、聖子ちゃんのモノマネしてたね。あんたはうちらと一緒やから、明日から来なさい』と言ってくれて、弟子入りみたいなかたちでお世話になることになったんです。やっと理解者が現れたと、目の前が大きく開けた瞬間でした」
恩人との出会いに助けられ、下積みを経て、芸能活動を開始したはるな。人気アイドル・あややこと松浦亜弥の動作やMCを完コピした“エアあやや”で、一躍人気タレントの仲間入りをはたしたものの、彼女の芸能生活は決して順風満帆といえるものではなく……。
「現在(いま)みたいにテレビのお仕事をたくさんいただけるようになる前のこと。岐阜で暮らす母に会いに行ったんです。『仕事は大丈夫なの?』と聞かれて、『こっちでは放送されないけど、東京だけの番組に出ているよ』って嘘をついたんですが、母は何もかもわかっていたようで、『苦労は絶対に報われます』と書かれた手紙と2万円を渡してくれました。悲しい思いをさせたくないから、母の前では〝賢示〞として振る舞っていたんですが、ある日、母が『愛って呼ばなあかんね』と。そんな母と接していることがつらく、日帰りで東京へ戻ろうとしたら、『愛のためにパジャマを買ったから泊まっていき』って。お風呂からあがると、クマのイラストの可愛らしいパジャマが用意されていて、私の生き方を認めてくれたんだなって思いました」
一方、父親のほうはいまだに「賢示」と呼ぶものの、はるなが女性として生きたいと打ち明けた高校生当時、「やるんだったらとことんやれ。その代わり、“男”なら1番をとれよ」と励ましてくれたそうで、はるなは「女として生きたいって言っているのに『男なら』って(笑)。お父さん、意味わかってるのかな?って思ったけど、その言葉がいまもずっと残ってるんですよね」と懐かしそうに回顧する。