しかし、そういう説明もなく「3万2957人」という数字だけを聞かされ、「1万1611人」「3430人」「708人」などという数字が踊る日本地図を見させられたら、ピュアな視聴者はどうなるか。「いよいよ日本も2カ月前のニューヨークやパリのようになるのか」「このままじゃ、8割おじさん(西浦博・北海道大教授)の言う通り、43万人の死者が出るぞ!」と恐怖と不安でパニックになり、中には自分を失って、とんでもない行動に走るような人も出てくるだろう。

激しい恐怖や不安で
我を忘れる人々が続出

 事実、日本全国で「狂気」に支配されてしまった人たちが続々と報告されている。長野県では、行員の感染者が確認された長野銀行小諸支店に、何者かが石が投げた。アメリカ人留学生の女性は、街中で見知らぬ男から「ウイルスを撒き散らしやがって」と恫喝されたことを『スッキリ』(日本テレビ系)で証言している。

 また、コロナの院内感染があった京都の堀川病院はもっと深刻だ。「人殺し」「火を付けるぞ」という匿名の脅迫電話が相次ぎ、職員は訪れた飲食店で「うちの店に来ないでください。汚らわしい」などと罵声を浴び、身の危険を感じるような言葉をかけられた人もいるという。

 日本は欧米諸国と比べると、ケタ違いに感染者も死者も少ない。にもかかわらず、「最前線で頑張る医療従事者の皆さん、ありがとう!」という思いを帳消しにしてしまうほど、激しい恐怖や不安で我を忘れてしまっている人たちが、世の中にはたくさんいるのだ。

 ただ、冷静に考えてみれば、パニックに陥る人が多くなるのも当然かもしれない。「累計感染者数」は右肩上がりなので、これをワイドショーなどで毎日朝から晩まで見させられると、「昨日より今日、今日より明日」という感じで加速度的に状況が悪化しているような印象を与えてしまう。人々を実態以上に悲観させてしまうのだ。

 断っておくが、今の感染拡大の状況が「大したことではない」などと言いたいわけではない。全国で新規感染者が増えているのは紛れもない事実なので、各地の医療体制を考慮して、死者や重症患者を出さないために警戒すべきということに対して、全く異論はない。