そして、このように彼らが「数の積み上げ」に夢中になればなるほど、国民が不幸になっていく恐れがある、ということを我々は歴史から学ぶことができる。

 1945年4月、米軍が沖縄に上陸してから現地では激しい戦闘が行われた。5月12日、大本営は4月29日から5月7日までの間に、以下のような「累計戦果」を発表した。

「人員殺傷1万2600人 戦車輛坐炎上134輛 各種火砲破壊39門」「撃沈 特設航空母艦 二隻」「撃破 特設航空母艦 三隻」(読売新聞 1945年5月12日)

 これを受け、マスコミも一面で大きく取り上げて、「沖縄陸海に敵出血激甚」などという大はしゃぎをした。しかし、米軍側に多くの血が流れたのは事実だが、実はそれ以上に日本側の被害は甚大だった。諸説あるが、6月19日に日本軍の組織的抵抗が終わるまで、一般住民約9万4000人、日本兵にも同程度の犠牲者が出たと言われている。

「経済死」続出の前に、政治家と
マスコミは数の積み上げをやめるべき

 この悲しい歴史から我々が学ぶべきことはただ1つ。政治家やマスコミが実態とかけ離れた「数の積み上げ」に夢中になっているときは、国民の命が軽んじられている、かなり危ないときであるということだ。

 役所とマスコミがタッグを組んで、全国の感染者を積み上げて国民の恐怖と不安を煽っている今は、まさにそのときである。今のお祭り騒ぎが続けば、「経済活動よりも命の方が大事だ」という自粛ムードが強まって、多くの人たちが路頭に迷う。「コロナ死」の数どころではない、「経済死」の犠牲者が出てしまう恐れもあるのだ。

 マスコミは「日々の感染者数に一喜一憂しないで」と言いながらも、「相次ぐ過去最多」「ついに1000人を超えました」と毎日の感染者数をネタにして、誰よりも盛り上がっている。戦争を無責任に煽った過去を少しでも悔いているのなら、一刻も早く「感染者数の積み上げ」をやめて、重症者数、死者数の動向を詳細に伝えるようにすべきだ。

(ノンフィクションライター 窪田順生)