新型コロナウイルスの感染が広がる中、安倍晋三首相は憲法第9条を残したままにして自衛隊の存在を明記するという改訂案を表明した。これは以前、米国のトランプ大統領が就任した2017年5月3日(憲法記念日)に、安倍首相が憲法改訂案として述べたものでもある。もともと安倍首相の信念は憲法第9条自体の破棄であったのに、なぜ破棄ではなく、9条をそのままにして「自衛隊の存在の明記」となったのか。『米中密約“日本封じ込め”の正体』を上梓した政治経済学者(日本金融財政研究所所長)の菊池英博氏にその理由を伺った。

米国の「日本封じ込め」政策が
9条の存在を守っている

 憲法改訂(とくに第9条破棄)に熱心な安倍首相が、衆院予算委員会で「自衛隊をしっかりと憲法に明記し、その正当性を確定することこそ安全保障、防衛の根幹だ」と述べた。なぜ「9条を維持したうえで、そこに自衛隊の存在を入れる」と言わざるをえなかったのだろうか。

 それは、第二次世界大戦の戦後処理に関わっている。

 第二次世界大戦の戦勝国(米国、英国、フランス、ソ連邦、国民党の中国)は、ドイツと日本が再び侵略戦争を起こさないように「封じ込める」政策をとってきた。日本に対しては、米国が勝戦国の代表として、日本の憲法に第9条(戦争放棄と軍備放棄)を規定し、日米安全保障条約によって「日本封じ込め」政策をとってきたのである。

 したがって米国の使命は「憲法第9条を絶対に破棄させない」(日本に軍事主権を持たせない)ことであり、さらに日米同盟で日本が侵略行為に出ないように日本を「封じ込め」ている。

 ドイツも、二度と侵略行為ができないように封じ込められている。

 基本法(憲法)第24条で「世界平和の秩序維持のために主権的権威を国際機構に移譲する」と明記され、ドイツには軍事主権はない。またドイツ軍はNATO(北大西洋条約機構)に組み込まれているので、ドイツは自国の判断だけでは自国軍を一歩たりとも国外に出すことはできない。冷戦時代にソ連に対抗するために西ドイツ(米英仏が占領)は1955年に再軍備を許されたが、基本法とNATOで軍事主権を封じ込まれており、統一後のドイツも同じ状態である。