日米同盟の目的については、1971年のキッシンジャーと周恩来の会談で、中国も日米同盟による「日本封じ込め」の意義を認め、米中共同で日本を政治と経済の両面で封じ込めていく方針で合意し、秘密協定を結んでいる(元米国CIAで対中国の防衛政策を担当したマイケル・ピルズベリーが情報を公開)。

自衛隊を憲法9条に加えたい理由
戦勝国を代表する米国の思惑があると推察

 日本の最高裁が自衛隊は合憲であると認めている以上、あえて憲法第9条に付加する理由はない。それなのに、なぜ安倍首相が9条維持のまま、この9条に自衛隊を追加したいのか。

 昨今の米国の状況を鑑みると、「米国は軍事経費の削減のために、米軍を削減したいと思っており、そのためには、自衛隊を米国の傭兵として使いたい。安倍首相が憲法を改訂したいなら“憲法第9条は絶対に破棄させないが、自衛隊の存在を憲法に付記してはどうか”と米国が示唆してきたのではないか」と判断される。

 この判断について、複数の政治学者に意見を聞くと、賛成が圧倒的に多かった。

 この背景には、米国の次のような思惑がある。

「日本は集団的自衛権の限定的行使を閣議決定で容認(解釈改憲)しているが、憲法に第9条がある以上、実態は憲法違反だ。しかし自衛隊の存在を憲法に書けば、集団的自衛権の限定的行使を容認した閣議決定を裏付けることになり、米軍の指揮下で自衛隊を自由に使用できる」と、米国側が考えた結果であると思われる。

 現在の自民党の改憲案では「憲法第9条は破棄し、国防軍を明記する」ことになっているが、戦勝国を代表する米国は憲法第9条の破棄を認めないので、自民党案は具体化できない。そこで「9条維持のまま、自衛隊を9条に明記する」案を出したと判断される。

 米国のトランプ大統領は2017年11月の来日途上でハワイに立ち寄り、全世界に「リメンバー・パールハーバー」とツィートした。これは「日本封じ込め」政策の確認といえよう。

 米国はオバマ政権の2013年5月に、「安倍首相の歴史認識は米国の国益に反する懸念がある」「(安倍首相は)米国や近隣諸国が監視すべき強硬な国粋主義者である」(米国議会調査局)と懸念しており、トランプもこれを引き継いでいる。安倍政権になってから米国の日本封じ込めは一段と強化されており、拙著『米中密約“日本封じ込め”の正体』で分析した通り、日本経済の長期停滞もこの一環である。

 同書では、米中の覇権争いが目立ってきたとはいえ、「日本封じ込め」という米中密約は生きており、日本が憲法第9条を破棄できない原因が日本側にもあることも指摘している。過去四十数年の米中関係の真実と、米中間での日本の立ち位置を知ることができるだろう。