繊細さはひといちばい幸せを感じられる気質
──武田先生にとっては3冊目の著書ですが、今作を執筆するにあたり、とくに工夫したところはありましたか?
武田 やっぱり、幸せの本なので、自分が幸せじゃないと書けないんですよね。事例が集まっていれば書けるわけではなくて、自分の実感がないと書けないので、「幸せとは何だろうか?」みたいなことに、実生活の中でもすごく意識を向けてきました。「成果主義から一歩外に出ることで、幸せが見えてくる」など、深く集中して考えていたと思います。
──HSPという言葉を、最近よく聞くようになりました。悩んでいる人も多いのかなと思うのですが、今回「幸せ」にフォーカスをしたのは、なぜだったのでしょう?
武田 繊細さん=生きづらい、というネガティブなイメージに偏りがちなので、繊細さんのいいところをたくさん伝えたいという思いがまずありました。それから、社会が成果主義に傾いていることに危機感があって、人間らしい幸せを取り戻したいという思いがありました。
今、すごく、日本の社会全体に余裕がないと思うんです。最近の若者は繊細だ、という文脈のなかで「HSPが増えているんですか?」と聞かれることがあるんですが、HSPは昔からいるんですよ。50代、60代の方もご相談にいらっしゃいますしね。今の社会は雇用が不安定で、自力で生き残らなきゃいけない社会になっているから、たとえば、先輩に「この仕事どうしたらいいですか?」と聞いても、「自分でやってよ」と言われてしまう。そういう余裕がない職場や人間関係で悩む人がすごく増えて、悩みの中で自分がHSPだと気づくひとが増えた、という流れがあるんです。
今回の本を書くにあたって、早い段階で決めていたことは、ネガティブな言葉をほとんど出さないこと。
──ネガティブな言葉を出さない?
武田 説明が必要なので、出てはいるんですけど、ほとんどないと思います。ぱっと本を開いたときに、いい感じがするんですよ。「安心」とか「いいな」とか。そういう言葉。
──たしかに、最近書店では、「生きづらいがなくなる」とか「攻撃されない」といった、ちょっとネガティブなフレーズはよく聞く気がします。
武田 繊細さんについて知らない読者さんもいるので、ある程度、「悩みの解消」を書いたほうがいいんじゃないか、と思ったこともあったんですが、悩みの解消はこれまでの本でずいぶん書いたから、「これは幸せの本だ!」ということで、悩みはばっさり切ってほぼ含まず、幸せの方に注力したんです。すごく良かったなと思っています。
──たしかに、読んでいて楽しい気分になってきました。「あれもやりたい、これもやりたい」とワクワクしてくる感じがありました。夕焼けを心ゆくまで味わうとか、お花を買って帰ろうとか。こういうことからでいいのかと、すごくほっとできました。
武田 うん、ちょっとしたことからでいいんですよね。HSP気質は悩みとして見られがちなんですけど、私には「HSP気質っていいものだよ」という気持ちが根底にあるんです。たしかに大変な面もあるんだけれど、繊細さは、毎日の小さな幸せにもよく気づいて、存分に味わえる気質でもあるんです。良い面にも目を向けていただけたらいいな、と思っています。
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『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の編集を担当した吉田さんにも、本書への思いを伺ったのだが、このような答えがあった。
「そもそも繊細って、“幸せの気質”なんだということが、これからもっと浸透していくといいなと思うんです。読者の方からも反響がすごくて、“ポジティブなものだったんだ”とか、“この考え方は新しい! 泣きながら会社に行きました”とか、SNSに書いている方もいて。
今回の本はHSPの悩みの解決ではなく、繊細さんだからこそ味わえる幸せをもっと広めていきたいと思って編集しました。この本をきっかけに、HSPをもっとポジティブなものだと思ってくれる人が増えたらいいなと思います」
聞き手を担当させていただいた私自身も、本書を読み終えたあとは「ずっと悩んでいたけど、私、繊細さんでよかった!」と思えるまでになった。『「繊細さん」の幸せリスト』を実践するなかで、世の中の見え方が少しずつ変わっていくのを実感している。
「この本は、繊細な人が、繊細な感性で毎日の『いいこと』をキャッチし、めいっぱい幸せを味わえるようになる本です」
そんな一文からスタートする、『「繊細さん」の幸せリスト』。
普通の人が気がつかないようなことを敏感に察知するあなただからこそ、手に入れられる幸せの形がある。
もしかしたらこの本を手に取ることが、自分らしい幸せを見つけるための第一歩になるかもしれない。
【大好評連載】
第1回 HSP専門カウンセラーが教える「繊細さんが幸せをみつけるため」のブレイクスルー
第2回 「繊細さん」がアウトプットしたくなるのは、人生の転機の前兆?
第3回 HSP専門カウンセラーが語る「繊細さんの幸せの鍵」とは
第4回 繊細さはひといちばい幸せを感じられる気質