なぜ自分はストレスに耐えられなかったのだろう? どうして気にしすぎてしまうんだろう? 鈍感だったらもっと楽に生きられるのに──。
あなたには、仕事でそんな悩みを持った経験はないだろうか。まわりの人が気にしないような小さなことが気になる、相手の気持ちを敏感に察知してしまって疲れるなどの悩み。実はそれはあなたのせいではなく、「繊細」な気質があるというだけなのかもしれない。
『世界一受けたい授業』など多数のメディアで話題のHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)専門カウンセラー・武田友紀先生は、「繊細さ」は「幸せを感じるため」の素敵な感性であると語る。
今回は、「繊細な感性を持つからこそ」深く味わえる幸せを紹介する『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の発売を記念し、著者・武田先生に取材を行った。
ストレスで会社を2年間休職したことがきっかけでHSPを自覚したという武田先生は、「繊細さは克服するべき課題ではなく、毎日の幸せを存分に味わえる大事な感性である」と語る。その真意や、この本にこめた思いを徹底して聞いてみた。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)
「繊細さんが持つ6つの幸せ」とは
──今回の作品では、繊細さんが持つ大まかな傾向として、「6つの幸せ」というかたちで分類分けがされていました。
(1) 感じる幸せ…小さなことに気づいて楽しむのが上手
(2) 直感の幸せ…「自分に合うもの」が一瞬でわかる
(3) 深く考える幸せ…本質的なことに目を向ける
(4) 表現の幸せ…細やかな感性が豊かな表現につながる
(5) 良心の幸せ…「自分のため」と「人のため」が重なったとき、大きな力を発揮する
(6) 共感の幸せ…相手の気持ちを大切に受け取る
これは、どのようにして分類分けされたのでしょうか?
武田 この本を書き始めるまでに、カウンセリングで700人くらいの繊細さんとお話ししました。仕事選びのご相談では、「プライベートでも仕事でもいいので、これが好きっていうものがあったら教えてください」「これをやっているときには集中しているな、というものはありますか?」などの質問をするんです。そうやって聞いてきた繊細さんたちのお話をもとに分類しました。創作活動してる繊細さんも多くて。たとえば、趣味で詩を書く方が「会社の同僚とのあたたかいやりとりが詩の原動力になっています」など、話してくださるんです。そういう具体的な事例から考えていきました。
HSP専門カウンセラー
自身もHSPである。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、日本全国から相談者が訪れる。著書に『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社)、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)がある。ラジオやテレビに出演する他、講演会やトークイベントなども開催し、HSPの認知度向上に努める。
──6つのうち、どこで幸せを感じるのかは、繊細さんによって違うのでしょうか?
武田 この「6つの幸せ」って、繊細さんは大体みんな持っているものだと思います。たとえば、今のところ特に表現活動はしていない、という人でも、自分らしさが見えてくるにつれて、表現をするようになったり。カウンセリング後にお客さんから、「note始めました」「SNS始めました」というお便り、本当によくいただくんですよ。
繊細さを受け止めて、本音を大事にしていると、だんだん「自分がどういう人間で、何が好きなのか」がわかっていくんです。こういう服が着たいってわかるようになったり、料理が好きになったり、自分の思いを発信したいと思えるようになったり……。服も、料理も、発信も、全部、表現の一つですから、「表現の幸せ」は、人生が進むにつれて出てくると思います。
なので、今、この「6つの幸せ」のなかで「まだないな」と思うものがあっても、「これから出てくるのかも」と思って読んでいただけたらと思います。
直感も思考も使えるようになると、表現の質も上がる
──この本で書かれている「6つの幸せ」のうち、どこからトライしていけばよいでしょう? 自分が気になったものからでいいのでしょうか?
武田 当てはまるところからでいいと思いますよ。ただ、第4章の「表現の幸せ」に関しては、「感じる幸せ」「直感の幸せ」「深く考える幸せ」の合わせ技なので、第1章〜第3章がそろうと、よりエネルギーが強くて、心に響く表現ができるようになると思います。
──感じる幸せ、直感の幸せ、深く考える幸せを味わうことで、表現の幸せももっと感じやすくなるということでしょうか?
武田 そう、自分の感じ方を「いいものだ」と思えると、たくさんのことを安心して感じられるわけです。解像度が上がりますね。安心することで以前より直感もはたらくし、腰を据えてじっくり考えられるようになるから、表現のクオリティーも上がる。そうやって、素の自分で表現することで、自分に合った人たちとたくさん出会える──。第6章の、「共感の幸せ」にもつながっていく。
──まずは、「自分の心が喜ぶものって何だろう?」というふうに、ちょっとずつ感じるところからスタートして、「繊細っていいかも!」と思えるようになってきたら、アウトプットする方向へ広がっていくんでしょうか。
武田 そうですね。繊細さを大事に、好きなものを好きだなぁと存分に味わうなかで、「ブログに書いてみようかな」「自分でも作ってみようかな」と思ったり、「もっといろんな人とつながりたい」とふと思ったら、表現が始まっていきますね。「ちょっとやってみようかな」という、なんとなくの気持ちを大事にしていただけたらと思います。