メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟と連立政権を組むドイツ社会民主党の中にも「エンジン車への補助金を認めたら、緑の党から政権批判が出て混乱する」との意見があったと、現地では報道されている。VWはジャーナリストに対し「ドイツ国内の電力を使う限り、現状ではディーゼル車もBEVも排出はそれほど大きくは変わらない」というデータでアピールしたが、その声は結果的に届かなかった。

CO2 削減量は
差し引きすると大きくない

 7月に入って、BEVのLCAベースCO2排出量について、ドイツ国内のエンジニアリング会社などが反撃を開始した。さまざまなロビー活動を行なっている。

 その中のひとつが、ドイツのFVV(内燃機関の研究所)によるレポートだ。「2020年代に1050万台のBEVが普及すると、CO2排出削減効果は合計7380万トンになるが、その一方で発電や新たなインフラ整備で6990万トンのCO2が発生する」という。BEV普及を進め、再生可能エネルギーによる発電を順調に増やしても「差し引きで390万トンの削減にしかならない」と結論付けた。

 これもひとつのシミュレーションである。

 EU政府がBEVの排出をLCA視点にしないのはなぜだろうか。「原発は環境負荷無限大」とのコンセンサスは取れている。しかし原発由来の電力は排出ゼロである。2023年にEU政府は、将来の自動車排ガス規制のためのレビューを行う。現状では、このレビューでLCA視点が導入される可能性は低い。

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(報告/牧野茂雄、まとめ/CAR and DRIVER編集部)

【お詫びと訂正】 記事初出時にID3とeゴルフを取り違えていた個所がありました。お詫びするとともに、記事を差し替えさせていただきます。 (2020年8月19日 カー・アンド・ドライバー編集部)