観賞用・芳香剤として販売される「脱法ハーブ」

 最近では、“普通の人”であっても「脱法ドラッグ」という言葉を聞いたことはあるだろう。

「脱法ドラッグ」を服用した有名企業の職員が体調不良を訴え救急車を呼んだ出来事や、服用後まもなく車の運転をした者が交通事故や暴力沙汰を起こした事件が報道されている。今年の8月には、米国で90名近くの逮捕者と1900万袋の押収がなされるほど大規模な摘発が行なわれたことも報じられた。

「脱法ドラッグ」とは、その名の通り、多くの人が名前を知っている大麻、コカイン、ヘロイン、覚せい剤といった違法な麻薬・ドラッグとは異なり、「法律による取締の対象になっていない薬物」のことを指す。かつては、もしくは現在も、使用する者の中にはこれを「合法ドラッグ」と呼ぶ者がいる。

 これだけでは、多くの人にとってはまだ疑問が残っているだろう。「脱法」にせよ「合法」にせよ、「問題があるならなぜ違法にしないのか」と。あるいは、「違法ではないなら問題がないのではないか」と。

 明らかに「脱法ドラッグ」が原因と考えられる具体的な事件が発生しているにもかかわらず、なぜ「違法」とされずにいるのだろうか。

「例えば、有名な(脱法)ハーブに、α‐PVPっていう化学物質が入っているものがある。これって、化学式を書いてみるとほとんど覚せい剤と変わらない。『脱法ハーブ』って、見た目はポプリみたいに乾燥させた自然植物の花や葉っぱだけど、そこに、α‐PVPみたいな麻薬に類似した何らかの化学物質をまぶしてつくってる」(サトシ)

パッケージには「2」の文字が。「人体に摂取しないでください」という注意書きも

 規制された「違法」物質と似て非なる「合法」物質を含んだ「ポプリ」は、観賞用もしくは芳香剤として販売されている。確かに、芳香剤のような香りを放っているものの、体内摂取用として販売するとなると薬事法の規制対象になるために、そういった「建前」のもとで店頭に置かれているのだ。

 もちろん、規制当局がこのような薬物を野放しにしているわけではない。むしろ、法的な規制の対象となる「麻薬に類似する物質」は常に増加している。しかし、ある薬物に規制が設けられてもその類似物質が化学的に生み出され、新種のハーブとして販売される現実がある。

「有名なパッケージだけでも、ハーブってもう100種類ぐらいあるんじゃないですかね。規制の問題だけじゃなく効き方も含めて。1ヵ月に1回、平均3種類ぐらい新しいのが出てると思う。だから中には、例えば『○○2』とか『○○3』とか、同じ効き目だけどシリーズの最新作が出てくるのもあるわけ」(サトシ)

「違法」の網が広がるほどに、そこから逃れた「合法」の余地も拡大するイタチごっこが続いているのだ。