お金にルーズな総務課の30歳の社員Aは、ある日、偶然会社の倉庫で会社のノベルティーを発見した。女優がプリントされたうちわで、こっそりネットオークションで高額出品してしまい、会社は思わぬ大騒動になる。会社のノベルティーで一儲けしようとすると一体何が起こるのか。果たしてAの運命はいかに…。(社会保険労務士 木村政美)
サービス業。従業員200名。
<登場人物>
A:30歳。独身。総務課在籍。車が趣味。ネットオークションで車関係の物品を購入している。
B:35歳。総務課長でAの上司。
C子:甲社のノベルティーで採用されている女優。
D:40歳。甲社の社長。プライベートでよくネットオークションを利用している。
E:甲社の顧問社労士
乙社:甲社の最大取引先。乙社長はC子の大ファンでファンクラブに入会している。
ローンでカツカツ社員
会社で女優のノベルティーを発掘
甲社の今年度上半期の売上高はコロナの影響もあり昨年比で50%以上低下、そのため全社員、夏のボーナスは不支給となり、この決定を聞いたAは困惑した。なぜなら1年前新車を購入した際ボーナス払い併用でローンを組み、7月末の返済期日までに40万円が必要だったからだ。あてにしていたボーナスはゼロ、車の頭金やアクセサリー類に消費しすぎて貯金もゼロ。ローンの返済ができなければ、せっかく手に入れた愛車を手放すことになってしまう。考えただけで気分はふさぐ一方だった。
7月上旬のこと。AとB総務課長は、事務所の裏庭にある倉庫の中を整理していた。Aが戸棚の掃除をしていたとき、大きめの段ボール箱が置かれているのを発見。中を開けると、水着姿のC子の写真が載ったうちわが500本、束になって入っていた。Aは総務課長のBに尋ねた。
「C子ちゃんのうちわがたくさん出てきましたが、これ何ですか?」
「ああ、それは3年前にイベントで配るために作ったノベルティーだけどイベント中止で使われず、結局倉庫に置いたままだよ」
「どうしましょうか?」
「多分他のゴミと一緒に処分かな?社長に確認するからそれまで置いておこう」
その後、B総務課長は会議に出席するため、倉庫の鍵をAに託し倉庫を後にした。一人残されたAはうちわを1本取り出し、「もったいないなあ…C子ちゃんかわいいのに」とつぶやきながら眺めていたが、とある考えが浮かんだ。