「L・G・B」に対して、人事担当者が留意すべきこと
L・G・Bの「性的指向」に関するカミングアウトについて、人事担当者が留意すべきことが3点ある。
1.会社としての方針を定めておくこと
2.当事者本人の希望(意思)を確認すること
3.当事者を腫れ物扱いしないよう配慮すること
まずは、「会社としての方針を定めておくこと」。
求人に応募してきた人材が、面接時(または、エントリーシート)に「わたしはレズビアン(ゲイ、バイセクシュアル)です」とカミングアウトしてきた場合、会社の方針が定まっていなければ、人事担当者は対応のしようがない。
たとえば、会社の方針は次のようなものが考えられる。
・職場でカミングアウトすることは問題ない
・職場でカミングアウトすることは問題ないが、あくまでも自己責任
・職場でカミングアウトすることは原則的に認めない
L・G・Bのカミングアウトについては明確な取り決めを
職場でのカミングアウトを認めないトップ(経営者)や役員には、反対する理由を尋ねてみるのがよいだろう。単なる感情論(好き嫌い)や先入観が理由なら、その方針は変更となるかもしれない。言うまでもなく、カミングアウトを行うか否かは本人意思の尊重が第一であり、「職場でカミングアウトすることは原則的に認めない」はあってはならないことなのだ。何らかの理由で職場環境がカミングアウトに適切でない状況においては、人事担当者は、当事者自身に不利益を生じさせないことを最優先に考え、現時点での社内の理解度の低さ・温度差を率直に伝えておくのも方法のひとつだろう。入社後に当事者の希望する状況と異なっていたら、当事者は大きな失望を覚えるにちがいない。仕事を続けながら人間関係を築いていきカミングアウトしていく場合は、人事担当者は当事者本人の希望とともに出来る限りのサポートをしていく必要がある。
人事担当者が留意すべき2点目は、「当事者本人の希望(意思)を確認すること」。
当事者本人の希望とは…
・自分の性的指向を社内でフルオープンにしたい(従業員全員に知ってもらってよい)
・人事担当者や直属の上司など、(自分の性的指向を)限定的な人だけに知っておいてほしい
・人事担当者だけに(自分の性的指向を)知っておいてほしい
といったことだ。
当事者にとって最も避けたいのは、自分の意思に反したかたちで「性的指向」を他人に知られること。これを「アウティング」という。アウティングは、何よりも当事者を傷つける結果になるし、取り返しのつかない出来事に発展する可能性も高い。そのため、当事者本人に、「情報開示をどこまで望むか」という意思確認をしっかり行うことが重要だ。また、当事者の希望に合わせて、直属の上司などに情報開示する場合は、その者(直属の上司など)に「アウティング」についても同時に説明し、他言無用を徹底する必要がある。
当事者が社内でのフルオープンを望む場合も、「人事部から配属部署などに公式通達する」ことを望むのか、「自らでカミングアウトしていきたい」のかを見極めないと、「アウティング」につながるリスクがある。このフルオープンの場合は、当事者と人事担当者との綿密なコンセンサスがいっそう必要だ。LGBTダイバーシティ推進を行う者は、LGBTに対して、ある程度の“理解”がある。しかし、社内の者すべてが同じように理解しているわけではない。「LGBTは生理的に受け付けない」といった偏見があったり、さまざまな価値観を持つ従業員が在籍していることを当事者に伝えておかないと、職場での人間関係がこじれたときに大きな問題に発展する可能性がある。