最近では、米国で使われている「LGBTQ」という言葉を使うメディアもあるが、性的マイノリティの総称のひとつとして使われているのが「LGBT」だ。2010年代以降、組織の成長を促す「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げる企業や団体が増え、それを実現する多様な人材としてLGBTも挙げられている。そこで、今回は、企業の人事担当者やダイバーシティ推進担当者が知っておくべき、「LGBT」に関する基礎知識をまとめる。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)
*「LGBT」は性的マイノリティの総称のひとつですが、本稿と次稿では、この言葉を形成する「L」「G」「B」「T」のセクシュアリティについて論考します。
*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「LGBT当事者が職場で感じる“ハート”と“ハード”の違和感」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。
「性的指向」と「性同一性・性自認」の違いを知ること
「L=レズビアン」「G=ゲイ」「B=バイセクシュアル」――「L・G・B」は、「誰を好きになるのか?」(性的感情・恋愛感情の対象となる性別は?)という「性的指向」に基づく区分。LとGの性的感情・恋愛感情の対象は同性であり、Bは両性だ。「性的指向」に関するものとしては、「パンセクシュアル」「アセクシュアル」「デミセクシュアル」といった概念やカテゴリーもあるが、まずは、「L・G・B」を理解することが肝要だろう。
「T=トランスジェンダー」――「T」は、生まれるときに与えられた性別と、自分が認識している性別に「違和」があるという「性同一性」に関するセクシュアリティのこと。「性同一性障がい」という言葉の認知度が高いので、「トランスジェンダー=性同一性障がい」と思い込んでいる人もいるが、そうではない。
性同一性障がいとトランスジェンダー
性同一性障がい(Gender Identity Disorder)は、英語の頭文字をとって「GID」ともいい、性別違和を抱え、2人以上の医師に「性同一性障がい」であると診断され、性別適合手術を受けた後、家庭裁判所への申し立てを行ったうえで戸籍を変更した人、もしくはその過程にある人のことだ。
トランスジェンダーは、性別適合手術や戸籍変更を当事者が望んでいないことも多く、自認する性、もしくは、希望する性として生きる人のことをいう。
*最近はトランスジェンダーを「トランス女性(MtF)」「トランス男性(FtM)」と表す(自称する)こともある。
*「女性」「男性」のどちらにも属さない「Xジェンダー」「ノンバイナリー」であることを自認する人もいる。