厚生労働省(2020年8月4日発表・ハローワーク業務統計)によれば、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年2月から6月までに解雇された障がい者の数は1104人(去年の対前年同時期比=約116%)――「一般労働者と比較すると、障がい者の就職件数や就職率の減少幅は、小規模に収まっている」との同省の見解だが、実際、今回のコロナ禍における、企業・団体の障がい者雇用はどのような状況だろう? “障がい者が制約を機会に変えてイノベーションを創出するための支援を行う”一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)の栗原進事務局長に話を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部) 

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「さまざまな障がい者の雇用で、それぞれの企業が得られる強み」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

“情報保障”をきちんとやらなければいけない気づき

 一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE)は、「障がい者雇用の新しいモデル確立」を目指す大手企業が2013年9月に設立した団体だ(会員企業は2020年4月1日現在34社)。2カ月に一度、その会員企業の担当者(主に人事担当者)が定期的に集まり、障がい者雇用関連の活動報告と情報共有を行っている。まず、今春から夏のコロナ禍における、定例会への影響を栗原事務局長に聞いた。

 「今年3月・5月・7月の定例会はオンラインでの開催を余儀なくされました。しかし、これまで、毎回、各社2人くらいずつの参加で、30~40人が定例会に出席していたのですが、オンラインによって地方のオフィスに在籍している方も容易に参加できるメリットが生まれました。もちろん、初のオンライン開催となった3月は戸惑いがありました。皆が一堂に会して、同じ空間に集まった方が議論は活発になりますし、オンラインでの参加だと、自分がどのタイミングで発言すれば良いのか分からない感じでした。その後の定例会では、オンライン上でのグループディスカッションを取り入れるなど、議論が活発になる工夫を取り入れることで、より充実した会になるよう心がけています」

 ACEの定例会は、外部からのゲスト講師を招いたうえでの「勉強会」も兼ねている。5月は、ユニバーサルデザインを提案する株式会社ミライロの担当者を招き、同社が行った「新型コロナウイルスによる障がい者の働き方への影響」の調査結果を共有したという。

 「ミライロさんからの提案で、聴覚に障がいのある方用の字幕と手話通訳をオンラインの画面に入れることにしました。定例会の出席者は全員が健常者なので、最初、その発想は出てこなかったです。しかし、これからの時代はオンラインでのセミナーが増えるはずなので、わたしたちACEという団体が、外部向けセミナーにおいて、メインのスピーカーとは別に手話通訳者の画面を入れ、さらに音声認識の文字表示を用意することは必然であり、必須だと判断しました。この、『普段から“情報保障”をきちんとやらなければいけない』という気づきはとても大きな価値がありました。準備と実際の運用はなかなか大変でしたが…」

写真提供:一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム

一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)
https://www.j-ace.net/
「企業の成長に資する新たな障がい者雇用モデルの確立」というミッションとともに、2013年に発足。さまざまな業種業態の企業34社(2020年4月1日現在)が中心となり、人事担当者や障がいのある社員向けのセミナーを行うなど、障がいがある当事者への啓蒙活動を実施している。2019年12月に開催された「ACEフォーラム2019」(写真)では、基調講演のほか、ACEの活動報告、ACEアワード(企業で専門職として活躍している障がいのある従業員をロールモデルとして表彰)の発表が行われ、来場した多数のメディアや企業関係者に、企業における障がい者雇用の深化と当事者の活躍を印象づけた。ACEの憲章にある「真にインクルーシブな環境を実現するため、私たちはダイバーシティを尊重し、新しい障がい者雇用のモデルを提唱します」という姿勢こそ、企業が障がい者に向き合うための理想といえるだろう。(「オリイジン2020」より)