在宅勤務は障がい者の仕事にどう影響したか…
「新型コロナウイルスによる障がい者の働き方への影響」――その調査結果の共有における、企業人事担当者たちの気づきはどのようなものだったか?
「ミライロさんから調査結果の報告や海外でのコロナ禍での企業の取り組み事例なども紹介いただき、その後の企業間の情報交換でさまざまな気づきがありました。ACEホームページの『定例会』報告にも多少まとめましたが、ウイルスの感染予防のために、肢体不自由な方が車いすで手すりに容易に触れられなくなったとか、エレベーターのボタンが押しづらくなったとか……身体に障がいのある方が、ご自分の生活周りで多くの困り事のあることを再確認しました。聴覚障がいのある方は、相手の口の形を読み取ることがマスクによってできなくなり、マスクをしている人との画面越しのコミュニケーションに不自由を感じていました」
たとえば、車いすを利用する障がい者にとっては、在宅勤務(テレワーク)は通勤の困難さから解放されるメリットがあるだろう。精神・知的・発達障がいのある人にとっても、満員電車を避けることは健常者以上に喜ばしいことかもしれない。その一方で、在宅勤務への抵抗感や仕事上でのデメリットは…
「在宅勤務の場合は、特に、精神・発達障がいの方の生活リズムが崩れてしまい、仕事に影響があるという人事担当者の声(報告)がありました。もちろん、皆が皆、そうだとは限りませんが…。また、『なぜ、家にいなければいけないのか?』と、在宅勤務の必要性をなかなか理解してもらえないケースもあったようです」
“コロナ”のデメリットをポジティブな方向に考える
健常者同様、新型コロナウイルスの感染拡大は障がい者の『働き方』に強い影響を及ぼしている。たとえば、パンを製造販売する仕事に就いている障がい者は店舗が営業自粛となり、いや応なく在宅勤務になってしまったという。『働き方』のみならず、企業と障がい者の雇用関係の変化、あるいは、今後、何らかの変化が生まれる可能性はあるのだろうか。
「“コロナ”のデメリットをポジティブな方向へ変えていこうという意見がACEの会員企業から積極的に出ています。わたしたちACEは大都市圏に本社のある企業が多く、採用活動の中心も大都市圏のみでした。しかし、コロナによって、在宅勤務の可能性が広がり、何らかの理由で会社に来られない人、通勤が困難な人も仕事のできる環境になりつつあります。つまり、企業側からすれば、採用の枠を日本全国に広げられるわけです。いま、地方で眠っている優秀な人材に対して、企業はもっと働きかけることができるのではないか?と。通勤することはできないけれど、自宅でプログラミングや事務ワークのできる人が日本中にはたくさんいるはずだ、と…」