コロナ禍で障がい者の採用枠はどうなるか?

 今春のコロナ禍では、21年卒の新卒採用においてオンライン面接を行った企業も多い。オンライン面接なら、都市圏にある社屋をわざわざ訪問する必要はなく、全国各地に在住する障がい者の就職のハードルは下がるだろう。

 「今後、採用面接を最初から最後までオンラインで実施する会員企業も出てくるのではと思います。人事担当者は、『面接時に(リアルで)対面したい』という思いもあるようですが、就労後のマネジメントについても、たとえいまはダイレクトに会えなくても、月に1回くらい何らかの形で会えればいいという働き方へのチャレンジです。障がい者の就労機会は在宅勤務によって拡がります。東京での電車通勤をせず、地方在住のまま勤められることは、企業と障がい者の双方にとってメリットになります」

 ……とはいえ、企業によっては障がい者の採用枠を減らさざるを得ない状況が出てくるのではないか? 「一般労働者と比較すると、障がい者の就職件数や就職率の減少幅は、小規模に収まっている」という行政機関の見解も、その減少幅のゆくえは各社それぞれの体力に左右されるのでは?

 「わたしたちACEの会員企業は『ダイバーシティ』を重視しています。企業が成長を続けていくためにはダイバーシティ&インクルージョンが絶対に必要という考えです。一時的なコロナの影響で、そのポリシーをないがしろにして障がい者採用の流れを止めてしまうと、将来的に健全な企業にはなり得ないとみんなが思っています。企業が弱まっているときこその『ダイバーシティ&インクルージョン』――それがブレない限り、ACE各社の障がい者雇用が縮小に向かうことはないと、わたし自身は考えています」

一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム
事務局長 栗原進(くりはらすすむ)

一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム
事務局長 栗原進(くりはらすすむ)

1992年日本IBMに入社後、システムズエンジニアとして損保、都銀、信託銀行と金融のお客様のシステムを担当。2000年に社内人材公募で広報部門に異動し、社内広報でイントラネットの再構築に関わり、その後、PRを担当しつつ、日本IBMのソーシャル・メディアの立ち上げや災害時のSNS活用のガイドラインの整備を行う。2018年、日本IBMを退社し、人事関連広報の経験を生かし、LGBTQ社員が自分らしく働ける職場づくりを進めるためのセミナー「work with Pride 2019」の実行委員長を経て、現在、一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアムの事務局長として、企業における障がい者雇用を推進する傍ら、フリーランスとして執筆や各種イベント運営などを担当している。

 

※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「さまざまな障がい者の雇用で、それぞれの企業が得られる強み」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。