会社更生手続き中の半導体大手、エルピーダメモリの更生計画案が8月21日に東京地方裁判所に提出され、弁済計画の全容が明らかになってきた。

 エルピーダの管財人が東京地裁に提出した更生計画案に添付されている「弁済・納付計画総括表」などによると、エルピーダの確定した債権総額は約3950億円に上る。更生計画が実際にスタートする日は2013年6月と想定されており、総額1400億円の弁済が始まるのは14年12月末からで、7年間にわたって分割払いされる計画だ。

マイクロンはエルピーダの買収を「非常に魅力的な取引」と投資家に説明したという
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 分割弁済を実現できる根拠として、更生計画案で掲げられているのが、エルピーダとスポンサー契約を結んだ米マイクロン・テクノロジーが身銭を切る「コストプラスモデル」だ。

 マイクロンがエルピーダに製造委託したDRAM(パソコンのメインメモリなどに使用される半導体素子)を、5~10%のマージンを乗せて買い取る。これにより、エルピーダは13年9月以降、毎年1820億~1940億円の売上高と40億~100億円の純利益を上げる。弁済の原資となるフリーキャッシュフローも20年2月までに計1730億円を確保でき、弁済総額の1400億円を上回るという計画だ。だが、本当に実現は可能なのだろうか。

 半導体業界に詳しい機械振興協会経済研究所情報創発部の井上弘基部長は「マイクロンの思惑通りに計画をコントロールできるのだろうか」と疑問視する。

 計画を左右する要因の一つはDRAM市場の動向だ。IHSアイサプライの調査によると、12年1~6月期のDRAMの世界シェアは、マイクロンとエルピーダの合計で25.8%。一方、韓国サムスン電子がトップの39.4%、韓国SKハイニックスが24.5%のシェアを握っている。

 井上部長は「サムスンとハイニックスの出方次第で、市場の方向性が決まる。マイクロンが安定マージンを乗せて買い取ることを守っても、購入量は確保できるのだろうか」と指摘する。