日本の半導体企業の苦境が続いている。エルピーダメモリの会社更生法申請につづき、ルネサス エレクトロニクスは1万人超の人員削減を発表した。その凋落の原因については、すでに学会やジャーナリストなど各方面から分析がなされているが、今回は、40年にわたり半導体研究・開発に携わってきた、産業サイドの第一人者とも言える菊地正典氏の分析と提言を紹介する。
『半導体工場のすべて』を著していた2012年2月27日、我が国唯一のDRAMメーカーで、日の丸半導体の代表とも呼ぶべきエルピーダメモリが会社更生法の申請を行ないました。製造業としては過去最大規模の倒産(負債総額4480億円)ということもあり、ニュースの衝撃は半導体業界のみならず産業界全体から官界や学界、さらには一般の人々の間にも燎原の火のごとく広がっていきました。
この衝撃が人々に喚起した想いは、大きく2つに分かれていたのではないでしょうか。すなわち半導体業界をよく知る人々は「やはり、とうとう」という諦めと無念であり、よく知らない人々には「まさか、そんな」という意外と絶句です。
我が国の半導体産業は、1980年代に大躍進を遂げ、同年代末には世界シェア50%を超える断トツの座に上り詰めました。しかしこれをピークに、1990年代に入るや、まるで坂を転げ落ちるかのようなジリ貧状態に陥り、状況の好転を見ることなく、無為に20余年を経て現在に至っています。
これに対し当事者である企業や業界や関連産業界、さらには国も含めて皆手をこまねいていたわけではなかったものの、「結果」から見ると、「失敗」と言い切ってなんら問題はないでしょう。
本稿は、このような背景のもと、長く半導体業界と半導体製造装置業界に身を置いた者として、我が国の半導体産業が窮地に陥った経緯、半導体産業の変化、今後の対応について考えるものです。我が国の半導体産業が抱える問題は、日本の他産業界の方々にも、自分たちの問題としても捉えることで、何らかの参考にしてもらえるのではないでしょうか。
最初に、半導体業界で活躍する各企業の業態と、こうした現状に至るまでに起きた「大きな業態の変化」から見ておきましょう。