FRB(米連邦準備制度理事会)による強力なQE(量的緩和)政策を背景に0.5%割れ目前まで迫った米国10年債利回りだったが、8月に入りリバウンドし始め、0.7%台を回復するような動きを見せている(次ページ図参照)。
米トランプ政権が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化を食い止めるために財政拡張路線を継続する中、8月5日には米財務省が四半期定例入札における長期国債・超長期国債の発行増額を決定している。これに伴う需給悪化への懸念が長期金利の上昇要因であるとの声が多い。
利上げや国債発行増額に伴う需給悪化が金利を上昇させる場合、それは実質金利の上昇という形で表れるのが通常である。
今次の米国長期金利の上昇を実質金利要因とBEI(ブレークイーブン・インフレ率)要因に分けると、実質金利が史上最低レベル(マイナス1%割れ)から若干底打ちしていることが確認される。
他方、BEIも相当に上昇している格好である。つまり、インフレ期待の上昇が米国長期金利の上昇に寄与したところが大きいといえる。