
野地 慎
トランプ減税延長を中心とする減税法案が成立した。審議の過程では、米国債の格下げもあったが、減税延長による赤字は関税収入で賄うというのがトランプ氏の公約。そのため、関税交渉で大きな譲歩は期待できない。ただ、関税収入への期待が米国の長期金利上昇を抑制することになるだろう。

トランプ氏によるEUへの新たな関税が全て撤廃されることは難しい。自動車への課税はユーロ圏の景気を大きく冷え込ませる。原油安とユーロ高ドル安の進行は物価上昇をさらに鈍化させる。インフレ沈静化と景気後退リスクが同時進行するなか、ECBはさらなる利下げに踏み込む公算が大きい。

トランプ政権の強硬な関税政策が市場に動揺をもたらし、株安・債券安・ドル安の「トリプル安」を誘発した。米中の一時休戦にもかかわらず、ドルの基軸通貨としての信頼は揺らぎ始め、各国の外貨準備戦略に変化が生じている。今後の市場安定のカギは、米国の対応と通貨体制維持への信念にかかっている。

4月9日、トランプ政権は実施したばかりの相互関税を、報復を表明しなかった国に対しては90日間停止すると発表した。日本には安堵感も漂っているが、トランプ関税の影響は日本経済に雇用調整、インフレ鈍化といった形で及ぶことは避けられない。

トランプ関税の嵐が吹き荒れるなか、米長期金利は低下している。株安による消費減少、関税による物価高が一巡した後のインフレ鈍化を見越している。2025年半ばから年末にかけてFRB(米連邦準備制度理事会)が3~4回の利下げに動く可能性は低くない。

トランプ関税による物価高が懸念されている。FRB(米連邦準備制度理事会)の次の一手は利上げではないかとの見方も出るほどだ。しかし、物価高は家計の購買力を低下させる。むしろ、FRBが利下げをする必要に迫られる公算もある。その理由を解説する。

米国の長期金利の上昇傾向が続いている。FRB(米連邦準備制度理事会)による国債保有削減やトランプ政権による国債増発懸念による供給増が原因とされているが、実はそれ以外の要因もある。リスク資産選好の高まりによる国債の需要減も金利上昇をもたらす要因となっている。

2024年12月の政策決定会合で日本銀行は金融政策の現状維持を決めた。ペースは鈍化するとはいえ25年にFRBが利下げを継続することは確実。円安で利上げに追い込まれる懸念がなくなった日銀は、「賃金と物価」の好循環を金融緩和で支えるという本来の姿に回帰できそうだ。

足元の長期金利の高止まりの原因をトランプ氏の経済政策に求める見方は多いが、実態は米国の個人消費の堅調さゆえである。ただ、移民流入、貯蓄率の低下などの下支え要因は今後剥落していく。2025年にFRBは複数回の利下げに踏み切り、長期金利の4%割れもあるかもしれない。

米国大統領選挙においてトランプ氏が優勢になりつつある。金融市場も株高、金利高、ドル高という形でトランプ氏勝利を織り込みつつある。ただ、勝利後の上昇は来年には止まりそうだ。その背景を探る。

FRB(米連邦準備制度理事会)は9月に0.5%の大幅利下げに踏み切った。雇用の悪化懸念が背景にある。しかし、株価の上昇、個人消費などの状況を見れば景気再過熱のリスクは否定できない。

投機筋が大幅に積み上げた円売りによって160円を超えたドル円相場。8月の株価大暴落前後でその売りのポジションはほとんど解消した。では、需給面から見て今後は円買い、円売りどちらが優勢なのか。各種データなどを基に検証した。

利上げの日銀、利下げのFRBというコントラストは円高をもたらす。7月末の日米中銀の政策決定の会合以降、円は急伸した。今後も日銀の利上げはとん挫する可能性ありだが、FRBの利下げは進み、ドル円は下落する。かく乱材料は米大統領選挙。民主、共和どちらが政権を担っても拡張財政策をとるとみられ、それはドル高方向に作用する。

再びドル円相場は1ドル160円を超えた。円安の主因について個人も含めた実需の円売りを挙げる向きが多い。しかし、実需ベースの売買動向を分析してみると前回160円を超えた4月の場面では、円買い介入を考慮しても大幅な円売り超過とはなっていない。

日本の円と主要国のみならず新興国も含めた外国通貨との金利差は依然大きい。過去最高水準に積み上がった投機筋の円の売り持ちに加えて、新NISAを契機に膨らんだ個人の売り持ちが膨らんでいる。これが相場が逆に動くきっかけがあればリスクオフの円買いが起きる可能性を高めている。

インフレ率下げ止まりを背景に上昇してきた米国の長期金利。4月の雇用統計の発表を機に物価の沈静化期待で低下し、水準を切り下げた。今後も沈静化が続くかどうかのカギを握る2つのポイントにつき解説する。

米国の3月のCPI(消費者物価指数)の前年同月比の上昇率が市場予想を上回ったことで利下げ開始の後ずれ見通しが強まり、金利は上昇した。移民増加が中立金利上昇をもたらし、景気拡大にも寄与したことで景気は堅調に推移している。ただ、移民増加は労働需給を緩和させインフレ圧力を和らげ、最終的には金利低下をもたらす。利下げ軌道に大きな変化はない。

日本銀行がマイナス金利を解除した。17年ぶりの利上げである。しかし、今後、さらなる利上げとなるとその道のりは険しく、円相場の上昇余地は限られるだろう。その要因を検証していく。

日経平均株価が急上昇している。インフレが継続するなか、低い実質金利の継続が見込まれること、株価は名目値の伸びを反映することを考えれば、インフレが株価上昇をもたらしているといえる。

2024年のFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ幅についてFOMC(米連邦公開市場委員会)のドットチャートでは0.75%。市場はそれ以上の利下げ幅を織り込もうとし、10年債金利は低下するが、そのたびにFOMCメンバーのけん制発言などで再び上昇することを繰り返している。実際に、利下げ時期や水準がどうなるのかを検証してみた。
