三菱電機が数年前から中国からサイバー攻撃を受け、防衛情報を盗まれていたことが今年1月に明らかになったが、今年6月にはホンダがサイバー攻撃を受け、国内外の工場が数日間、止まった。

 2010年には、尖閣列島で中国漁船が海上保安庁の船に衝突、日本が漁船の船長を逮捕すると、中国はレアアースの対日輸出を止め、対日製品ボイコットが起きた。

 中国に対して、米国は国防権限法に基づき、先端技術の輸出を制限しているが、日本企業が米国から入手した技術を結果として中国に流出させた場合には、日本企業が米国政府の制裁を受け、第2の東芝機械事件が起きる可能性がある。

 このような政治リスクに対して政府だけでなく民間企業も備えなければならない。

 米国の企業はFBI(連邦捜査局)やCIA(中央情報局)との情報交換により、その時々の政治リスクを知り、対策を講じているといわれている。

 だが日本では政府機関と民間企業間のインテリジェンス情報の交換はほとんどない。

 本来、政治リスクに対しては自国で守ることが基本であり、官民の情報交換システムを作るべきだ。

 また日本の企業も米国企業と同様に、まずはFBIやCIAのOBを活用して、政治リスク対策を強化する必要がある。

 世界のグローバリズムやグローバルサプライチェーンは時代とともに変化している。グローバル化はメリットも大きいが、リスクも大きい。

 日本は政府も民間も世界の「平和」と「安全」を前提に考えてきたが、残念ながら、「新冷戦」のもとでのグローバル戦略は生半可なものではすみそうにない。

 企業のBCP(事業継続計画)は東日本大震災を契機に相当、強化されたが、政府も民間も米中新冷戦について厳しめのリスク分析を行い、経済安全保障戦略、医療安全保障戦略を確立するとともに、「政治リスク対策」に本腰を入れる時だ。

(元通商政策審議官 荒井寿光)