「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。

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 前回に引き続いて、ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)が実務において、いかに武器になり得るかという、その具体的な理由について説明しよう。

4.組織を一枚岩にする

 「“経営陣”がミッション・ビジョン・バリューについて、徹底的に検討を行い答えを出しておかなければ、組織のあらゆる階層のものが互いの違いに気づくことなく、反対方向に向かって努力を続ける」(出典『ドラッカー5つの質問』山下淳一郎著、あさ出版)とドラッカーは述べている。

 スタートアップはPMFを達成し、資金調達してスケールフェーズに入ると一気に人数が増える。それまで数人規模の組織が、一気に数十人、数百人や場合によっては数1000人に膨れ上がる。

 一般に経営者が直接コミュニケーションを図れるのは30人までが限界と言われている。

 したがって、それ以上の人数になったとき、意思の疎通ができにくくなる。

 結果として、ドラッカーが警告しているように経営者の想いとは反対方向に間違った努力を続けたり、あるいは、働くうちに様々な疑問が湧いて意義を見出せなくなって離脱する人も出てくる。その状況に威力を発揮するのが「MVVによる訴求力/求心力」なのだ(下図)。