5. プロダクトの訴求力が高まる
どのようなプロダクトを打ち出した後でも、MVVは進化させていく必要がある。後ほど紹介するが、フェイスブックは外部環境の変化に伴って、自社のミッションを変えた。
また、それに伴って、プロダクトの思想/UXも大きく変えた。絶え間なく変化する外部環境の中で、自社プロダクトのUX改善や、機能追加に関する意思決定をするときも、MVVとの対話が重要になる。
MVVのフィルターを通ったプロダクトは、どんどん本質的かつ独自の価値を追求するようになり、自ずと、訴求力や魅力が高まってくる。
「我々は、素晴らしいコンピューターを作っています。美しいデザイン、シンプルな操作方法、取扱いも簡単。一台いかがです?」
もしアップルが自らの本質を考えず、表面的な「機能」の視点(=WHAT)のみでプロダクトを打ち出したとしたら、顧客にこのようなメッセージを発信していただろう(これは先に紹介したサイモン・シネック著、『WHYから始めよ!』に出てくる思考実験だ)。
しかし、実際のアップルのメッセージは以下のようなものだ。
「現状に挑戦し、他者とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。製品を美しくデザインし、操作方法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。その結果、素晴らしいコンピューターが誕生しました。一台、いかがです?」
(出典:『WHYから始めよ!』サイモン・シネック著、日本経済新聞出版)
本質や存在意義の視点(=WHY)から始めたアップルのメッセージは、自ずとこうなる。
「現状に挑戦する」という「WHY(なぜ、やるのか)」の追求を示すことで、顧客はアップル製品の持つ意味/世界観に共感できるし、ユーザーの「自己実現欲求」(=アップル製品を身にまとった自分の姿を欲する欲求)に訴えかけることができる。