「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。
本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。連載第3回も鼎談形式でお届けする。今回のゲストは、国内外でデジタルマーケティング事業を手掛けるAnyMind Group CEOの十河宏輔氏、カスタマーエンゲージメント向上を目的としたマーケティングツール事業を手掛けるRepro代表取締役の平田祐介氏のお2人だ。起業家から事業家へと移行したお2人は、どのようにそれを実現したのだろうか。

左から十河宏輔氏、田所雅之氏、平田祐介氏(収録:2019年12月25日) 撮影:石郷友仁

優秀なCOOを採用することで、
起業家から経営者へと徐々に移行できた(平田)

平田祐介(ひらた・ゆうすけ)
Repro株式会社 代表取締役
1980年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンサルティングファーム(現、PwCコンサルティング)戦略グループにて、主にターンアラウンド戦略の立案や新規事業開発の支援プロジェクトに従事。2011年から複数事業の立ち上げに関与したのち、2014年にReproを創業、現在に至る。

田所 今度、『起業大全』という本を出すことになりまして、この本のメインテーマが起業家から事業家への進化です。それで、お二人もそうだと思うのですけど、起業家のフェーズから、次に事業家になるフェーズというのがあって、そこがすごく大事かなと思っています。それで平田さんがこの前、この2~3年で自分の意識が変わって、起業家から事業家になってきたとおっしゃっていたのですけど、グローバルでビジネスを展開されているので、まずはその辺から聞かせていただけますか。今、従業員はどれくらいですか?

平田 従業員は250人程度です。

田所 そうすると、たぶんもう平田さんの下にミドルレイヤー層もたくさんいて、起業家から事業家に移行するフェーズということなのでしょうけど、変わるために何か必要な要素みたいなことってありましたか?

平田 僕の場合は、必然的に変わったというのが正直なところです。

田所 変わる圧がかかった、みたいなことですか?

平田 そうですね。経営メンバーを強化しないかぎり、この会社のさらなるスケールはないなということを、MRR(月間経常収益)が1億円前後のときにすごく感じました。それまでは、主要なリードの創出から商談化、成約に至るまでのプロセスを全て自分が行わなければ会社の成長は難しいという思いで、必死に売上を作っていました。

田所 最初はそうですよね。

平田 マーケとかカスタマーサクセスにもすごく口出ししたのですけど、完全にパンパンになって、自分が会社の成長のボトルネックになっているなというのを感じた瞬間がありまして……。そうしたら、やっぱり本格的にファンクションごとの役員を雇って権限を委譲しないかぎりは、MRR5億円、10億円っていうのは達成できないだろうなというのが肌感で分かったので、変わったということですかね。

田所 そういうことだったんですね。

平田 たまたま執行役員のメンバーがCOOの優秀な人を紹介してくれて、採用が順調に進んだっていうのがあって、今はどんどん経営のほうにシフトしているという状況ですね。

田所 ちょっと前までは、Chief Everything Officer的な感じのイメージでしたよね。

平田 そうですね。あとやっていないのは、コーディングだけみたいな(笑)。