就職活動は“競争”であることを念頭に置く
障がいのある方が一般企業への就職を希望するにあたり、自分自身で心がけてほしいこと、留意しておきたいことは何でしょう?
「まず、『障がい者だから就職は難しい』という漠然とした不安は持たないことです。できないことではなく、できることに目を向けて、それを磨けば、(就労の)チャンスは生まれます。障がいがあるからこそできる仕事もあります。あるタオルメーカーでは、視覚障がい者が優れた触覚を生かし、タオルの品質管理の仕事をしています。私が障がい者の就労支援をしていて特に感じるのは、障がい者雇用に関する知識を持っていない方が多いということです。『企業には障がい者を雇用する義務がある』と知るだけで、気持ちも変わるのではないでしょうか。私自身は、新卒の就職活動時、身体障害者手帳の等級を2級から4級に変更しました。これは、重度(2級)では採用されないと思ったからです。しかし、入社後、『重度であればダブルカウントだったのになんでそんなことをしてしまったの?』と言われました。私の無知によるものでした。企業には障がい者を雇用する義務があっても、応募者全員が採用されるわけではありません。企業は数多くの応募者の中から採用する人を選びます。就職活動は“競争”であることを忘れないでください。どうすれば一緒に働きたいと思ってもらえるかを考えることは重要です。メールや電話のレスポンスの速さ、その時の言葉遣いなど、すべて見られています。選考は面接の前から始まっています」
求人応募後の選考のひとつとなる“面接”において、特に気をつけたいことを教えてください。
「面接で企業側から見られるのは、スキルとマインドです。特に、『本人が強く働きたいと思っているか』は重要です。仕事をしていれば、嫌なことも大変なことも必ずあります。それらを乗り越えられるのは、周りから言われて仕方なく就職活動している人ではなく、自らの意思で働いている人です。ある特別支援学校の就職担当の先生は、『長く勤める人は、給料が入ったら何をしたいかが決まっている』と言います。就職して働けば、給料や経験、スキルなど得るものが多いですが、働きによって会社の業績を伸ばし、社会貢献するなど、より大きなことを実現するのも可能です。働くとは何か――それを、一人ひとりが根本に立ち返って考えることが大切です」