真のゴールはお互いが理解して働くこと

 実際の面接の場で、自分自身の思いや考えを企業の担当者(面接官)に伝えていくことはなかなか難しいですよね。

 「障がいについて自分の言葉で語ることが重要です。何ができて何ができないのか。採用試験では面接官が上(の立場の人)と感じてしまう方もいますが、どうすれば一緒に働けるかを対等な立場で話すことが重要です。会社では、自ら伝えなければ『問題ない』と思われてしまいます。家庭や学校などでは、相手が先回りして行ってくれることもありますが、会社ではそのようなことはあまりありません。(特例子会社でなければ)従業員のほとんどは健常者です。特に福祉の世界での生活が長い方は注意が必要です。合理的配慮の提供は企業に義務付けられていますが、必ず必要なものとそうでないものを分けておくと採用する企業の負担も少なくなります。自ら歩み寄ることも大切です。私が勤める会社は9時~17時勤務ですが、私自身は満員電車に乗るのが難しいため、1時間早く出発し、近くのカフェで新聞や本を読んだりしています」

 一方、たとえば、短い面接時間の中で企業の担当者は障がいのある方にどう向き合うべきですか?

 「障がいを詳しく話すと誤解され、不採用となるので、面接では詳しく話さず、入社後に困ったことが起きたら相談するという方もいます。しかし、内定を早く得ることがゴールではありません。お互いが理解して働くのが真のゴールです。面接を行う側の企業の方は、先入観を持たずに話を聞くことです。同じ障がい名、同じ等級でも、一人ひとり異なります。『この障がいの人はきっとこの仕事は無理だろう』と勝手に決めつけず、どうすればできるのかを聞いてみることです。たとえば、重度身体障がい者でも特注のキーボードを持っていて健常者と遜色ないスピードで入力できる人もいます」