いとう・あつお/政治アナリスト。1948年生まれ。神奈川県出身。学習院大学卒業後、自由民主党本部事務局に勤務。自民党政治改革事務局主査補として、政治改革大綱の策定に携わる。その後、新進党を経て、太陽党、民政党、民主党で事務局長を歴任。「新党請負人」と呼ばれる。2002年政治アナリストとして独立。執筆やコメンテーターの世界で広く活躍 Photo:Diamond

 本命だった岸田氏が失速する中、安倍政権を支えてきた人たちの間で、「次の総裁候補探し」が始まっていました。そこに安倍首相が突然辞任を表明したため、ここで緊急登板できるのは石破氏や岸田氏ではなく、長年官房長官を務め、安倍首相の政策運営を知り尽くしている菅氏しかいない、という機運が一気に高まったのでしょう。

――菅氏が「本命」に躍り出るまでには、どういうやり取りがあったのでしょうか。

 安倍首相から総裁選を任された二階俊博・幹事長は、早い段階から菅氏と頻繁に会合を重ねており、そこで総裁選への出馬を後押ししていたと見られます。二階氏は動物的な勘の鋭い人物。党内や安倍首相の意向をある程度察知した段階で、菅氏擁立へと舵を切ったのでしょう。

 菅氏自身も、7月上旬くらいから微妙にスタンスが変わってきていました。それまでは「次期総裁になる気は全くない」との発言で一貫していましたが、親しい人に対しては必ずしもそれを否定しないことがあったといいます。安倍首相に一番近いところにいたので、首相の体調面の変化にいち早く気付き、「もしかしたら」という思いがあったのかもしれません。

二階幹事長にとっては
「勝利こそが正義」

――二階氏は、石破氏とも気脈を通じている印象がありました。総裁選で党員投票を省略し、地方票に強い石破氏のハシゴを外す方向へ動いたのは、なぜでしょうか。

 二階氏は、「勝つことが正義」と考えている人。菅総裁が誕生したら、少なくとも自身の幹事長留任はほぼ確実となります。勝つためには、いつもあらゆる選択肢を持ちたいと思っているのでしょう。石破氏の勉強会への出席要請に応じたり、「期待の星」と発言したりしたのは、当時の勢力図を見据えながらのリップサービスの一環と思われます。先の東京都知事選でも、「必ず勝つ」と確信したからこそ、自民党との間に深い溝がある小池百合子氏の支援を表明したのです。