霞が関の官僚や自民党の族議員は、常に改革を嫌がります。だからこそ、成長戦略は正しい意味での官邸主導、つまり総理や大臣といった政治家のトップダウンによる「政治主導」で進めなければなりません。

 安倍政権では、成長戦略については総理や担当大臣のトップダウンによる「政治主導」ではなく、安倍総理の周辺の官邸官僚がその中身を仕切っていました。官邸主導ではあったのですが、政治主導ではなく「官邸“官僚”主導」で成長戦略が策定されていたのです。

 そうなると、当たり前ですが、成長戦略の中身は官僚が実現可能と考える(=所管省庁と交渉してまとめられる)手堅い範囲に止まりますので、改革としては手ぬるい内容にならざるを得ません。

 ちなみに、三本の矢の説明で“構造改革”ではなく“成長戦略”という言葉が使われたこと自体、官僚の改革嫌いを如実に表しています。

 そうした現実を考えると、菅政権にとっての経済政策の最大の課題は、過去8年弱にわたって停滞した成長戦略、正確には構造改革を正しい意味での官邸主導(=総理や担当大臣のトップダウンによる政治主導)によって一気に進め、アベノミクスを完成形に進化させることにより、日本経済の生産性と潜在成長率を高めることにあるのではないかと思います。

総理一人が改革派では改革は進まない

 それでは、新政権はどうやれば正しい意味での官邸主導で構造改革を進めることができるでしょうか。

 これまで菅氏は官房長官として、携帯料金引き下げやふるさと納税などの改革を仕掛けて実現してきました。ただ、これらは大きな改革というよりも、個別の改革です。官房長官という総理を補佐する立場では、総理の頭越しに大きな改革をぶち上げることは難しいので、個別の改革を進めることしかできなかったのだろうと推察されます。

 ただ、総理になれば誰にも遠慮する必要ありません。かつ、総理として改革を進めるには、まず改革を通じて目指す国家像や社会像が国民に伝わるような、大枠の改革アジェンダの設定が必要となります。

 さらに、官僚は大きな改革(=自分たちの既得権益が侵される改革)ほどサボろうとし、手練手管を駆使して改革の中身を骨抜きにしようとするし、加えて族議員とつるんで抵抗するので、官僚に対する官邸からの圧力と監視も必要になります。

 つまり、改革アジェンダの設定と官僚に対する圧力・監視という二つを政治主導でやっていく必要があるのです。