昨年12月、菅氏は政府をあげて高級ホテル建設の資金援助などを後押しする考えを示した。理由は、日本に海外の富裕層などをターゲットにした高級ホテルが少ないから、ということだった。それは事実であり、たとえば日本人が高級ホテルの代名詞と考える帝国ホテルや、ホテルオークラのスイートルームの料金は、1泊500万円は下らない世界の超高級ホテルからすればかなり安い。

 と聞くと、「金持ち優遇か」「中国人富裕層を喜ばせるだけで、庶民に何のメリットもない」と脊髄反射的に反対する人も多いが、実はこの観光戦略は庶民にとっても悪い話ではない。

 今、世界中で問題になっている「観光公害」の中で、一番タチが悪いパターンと言われるのが、外国人観光客がわんさかと訪れて地域住民に迷惑をかけているのに、その外国人観光客が地域に対してカネを落とさない、というパターンである。

 単価の安い客が大量に押し寄せるので、観光業は忙しいわりには儲からない。従業員の賃金も上がらない。それに加えて、カネをあまり使わない観光客なので、「お得さ」を重視して地域の人々が利用する安い店にやってくる。カネを使わず街ブラするため、よくそのへんで立ち食いもするし、ポイ捨てもする。生活圏が荒らされるのだ。

地域への恩恵よりも迷惑が上回る
「観光公害」が常態化していた

 そんな最悪の「観光公害パターン」が、実はちょっと前の日本だった。

 安く手軽に訪日できるということで、中国人観光客がワッと押し寄せて1泊5000円のビジネスホテルに泊まるので、出張族と客室の奪い合いになる。また、ドラッグストアやユニクロや家電量販店をまわって「爆買い」をするので、日本人の利用者にとっては迷惑この上ない。食事も地域の日本人がよく利用する居酒屋や、安くてうまい店に押しかけるので、いたるところで常連客と衝突する。

 つまり、外国人観光客がたくさん訪れてくれていたわりに、カネも落とす先が地域の庶民と変わらないため、地域経済にそこまで大きな恩恵がなく、単に庶民の生活圏が荒らされていただけ、という最悪のパターンだったのだ。