「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。
自分がよく知っている世界だけで考えるのは、リスクがある
書籍『ゼロ・トゥ・ワン』(NHK出版)でピーター・ティールは、資本主義で勝つために必要なことは「競争をしないこと」「競争を避けること」と明言している。
多くの起業家が、ここで躓いている。すでに世の中に十分な代替案があるにもかかわらず、「自ら見たい世界を見る」認知バイアスのせいで、その代替案の有効性を過小評価してしまうのだ。
自分がよく知っている世界だけで考えるのは、リスクがあることを肝に銘じよう。
戦略とは、文字通り、「戦を略す」と読む。不必要な戦に挑まないために、強力な競争相手、つまり十分な代替案や潜在的な競合企業が現状の市場に存在するか、を確認・検証する必要がある。
アマゾンが創業時に選んだ本の場合、「売れ筋のベストセラー」のみを扱っていたら、書店に行けば簡単に手に入ったので、誰もあえてアマゾンで購入しなかっただろう。