「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。
スタートアップが持つべき3つの戦略的視点
すでに述べたように、PMF(Product Market Fit:市場で顧客から支持される製品やサービスを作ること)するまでの起業家(CXO)にとって重要な視点が「戦略的泥臭さ」である。
そして、PMFを達成してさらに成長するときに重要な観点が「大局観ベースの戦略的リソース配分」である。CXOに戦略の知見が欠けていると以下のような事態になり、成長の大きなボトルネックになってしまう。
・PMFの実現可能性(フィージビリティ)が低くなってしまう
・事業の成長性(スケーラビリティ)の有無の判断ができない
・成長性(スケーラビリティ)と実現可能性(フィージビリティ)の両立ができない無理な(無茶な)戦略を採択してしまう
・持続的な競合優位性(ディフェンシビリティ)を意識しないので、事業やプロダクトがすぐに模倣されてしまう
・持続的な競合優位性を構成する要素を理解していないので、意思決定が近視眼的になってしまう
ユニコーン企業を目指すスタートアップが持つべき戦略的な視点は、大きく以下の3つに整理できる(下図)。
1.フィージビリティ(PMFの実現可能性)
2.スケーラビリティ(成長できるか)
3.ディフェンシビリティ(持続的競合優位性を築けるか)
戦略を立てるときに、この3つを満たすことに注力するのがポイントになる。