改革を担当する大臣が自らのチームを持つべき

 以上のように、菅総理は将来の社会像や国家観を明確に提示しているのですが、そこで民間や地方の成長を促す手段については、就任演説で「行政の縦割り、既得権益、そして悪しき前例主義を打ち破って、規制改革を全力で進める」と明言しています。

 つまり、コロナ対応での財政出動という需要創出と並行して、構造改革により経済の生産性と潜在成長率を高めようという、オーソドックスかつ正統派の経済政策を展開しようとしているのです。

 その第一歩として、デジタル庁がトップダウンで動き出していますが、私は個人的に、行革・規制改革を政治主導で継続的に進めるメカニズムを確立して、政府内に定着させられるかどうかが、菅政権の改革にとって一番の課題であり、かつ試金石になるのではないかと思います。

 というのは、今は政権発足早々なので、政権の最優先課題として総理や担当大臣のトップダウンで改革を進められていますが、総理はこれからコロナ対応や外交などで非常に忙しくなります。それに、担当大臣も国会が始まったら国会対応で忙殺されるので、常にトップダウンを続けることは無理だからです。

 その一方で、官僚の大半は縦割り思考で本能的に行革・規制改革が嫌いなので、表面は従順に従っても、制度の細部や文言などさまざまなレベルで改革を骨抜きにしようとします。

 また、デジタル庁を担当する平井卓也大臣の下にはIT総合戦略室、行革/規制改革を担当する河野大臣の下には行革推進本部事務局、規制改革推進室があります。しかし、これらの内閣官房、内閣府の担当室の陣容は各省庁からの出向者の寄せ集めです。そのため多くのスタッフは自分の出身省庁の権限を守る意識が強く、担当室の事務方に頼ってしまっては、改革の内容も官僚ができる範囲に止まってしまいます。これでは、安倍政権での成長戦略のように、つまらない内容になる可能性が高いと言わざるを得ません。

 もちろんそれでも、内閣人事局により官邸が各省庁の幹部人事を握っているので、人事権を通じて官僚にトップダウンで決めた内容をやらせることは可能です。しかし、官僚もやはり人間です。有無を言わさずにやらせるだけでなく、理屈で理解させた方が一層頑張ってくれるのも事実です。

 それらの事情を勘案すると、総理や担当大臣が忙しくなっても改革が進むようにするには、改革を進める大臣が外部の人材などを登用した独自のチームを組織して、そのチームが官僚と伍する形で改革を立案し、推進する体制を政府内のメカニズムとして確立できるかが重要となります。