スガノバブルスガノミクスは、アベノミクスのバブルを膨らませ続ける政策になる恐れが強い Photo:Pool/gettyimages

スガノミクスはアベノミクスと
根本的に異なっている

 第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉氏は、アベノミクスを継承すると言っているし、皆がそう思っている。それ以外に何をするのか、に注目が集まっている。

 しかし、それは間違いである。「スガノミクス」はアベノミクスと根本から全く異なっている。180度違うといっても過言ではない。説明しよう。

 アベノミクスが成功した理由は、アベノミクスという名前を定着させたことにある。7年8カ月を経て安倍前首相が退任しても、辞任会見直後に書いた「安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪」という私の記事は異常に読まれ、スガノミクスを誰よりも早く解説した記事は見向きもされなかった。

 すなわち、アベノミクスの成功はマーケティングの成功であり、「アベノミクスは成功した」と思わせることに成功したことにある。スガノミクスへの注目度は、支持率と同様に、現時点が一番高いはずだが、一般的には注目されてない。すでに、アベノミクスのような成功はおぼつかなくなっている。

 これには理由がある。アベノミクスは、賛否はあるが、コンセプトがはっきりしており、経済全体に対するヴィジョンのある政策であった。経済全体に関するマクロ政策であった。そして、経済と金融市場をひっくり返すような(私からすれば、とんでもない)ものであった。日銀を使って、インフレを引き起こし、デフレ脱却をし、株高円安を進める。異次元金融緩和は異常であったが、とにもかくにも金融市場全体を変えた。

 一方スガノミクスは、全体像がない。アベノミクスの全体、マクロ政策に対して、スガノミクスは局地戦、ミクロ政策である。

 ひとことで言うと、スガノミクスは「器の小さい政策」なのである。

 規制と戦うのは勇ましいが、あくまで部分的であり、経済の1つ1つの項目に関する話であり、局地戦である。それで世論は盛り上がるかもしれないが、経済はせいぜい一分野ごとにしか変わらない。

「縦割り打破」というもっと小さい話で、要は調整をもう少しうまくやる、という話である。全体に役立つように、部分ごとの目詰まりを解消する、ということである。立派ではあるが、ミクロであることは間違いない。