東京五輪の大切な主役をひとり失った日本スポーツ界
競泳の瀬戸大也選手の「不倫」が週刊新潮で報じられ、スポーツ界に大きな衝撃と落胆を与えている。
言うまでもなく、瀬戸は来年に延期された東京五輪2020の金メダル候補。バドミントンの桃田賢斗選手らと並んで、「最も金メダルに近い」と期待されている選手だ。リオ五輪こそ銅メダルにとどまったが、世界選手権ではすでに4個の金メダルを獲得している。これは北島康介選手をもしのぎ、日本選手としては史上最多だ。
国際的な実績も申し分ない。昨年の世界選手権優勝で東京五輪代表の第1号となり、競泳日本代表の主将にも決まっていた。2018年のアジア大会で池江璃花子選手が6つの金メダルと大会MVPに輝き、日本選手団を盛り上げたのと同様、東京五輪では瀬戸の活躍が競泳陣だけでなく、全競技の選手たちに自信と勢いを与える存在と期待を担っていた。
400m個人メドレーは、競泳の先陣を切って行われる
瀬戸が最も得意とし、リオ五輪では銅メダルを取った競泳男子400m個人メドレーは、開会式の翌日、大会第2日の最初に予選が行われる。そして3日目、競泳で真っ先に決勝が行われる。つまり、競泳の金メダル第1号、日本選手団全体としても最初の金メダルを瀬戸が胸に輝かせる期待が寄せられていた。瀬戸の金で日本チームに弾みがつく、応援する日本中が活気づく。そんなもくろみもあったが、今回で雲がかかった。
もちろん、この出来事を乗り越えて瀬戸が金メダルを手にする可能性はある。しかし、いろんな意味で障害が多くなるだろうし、もし優勝できても、この騒動が起こる前と今とでは優勝の歓喜の純度というか、世間の反応にも複雑な感情が混じることになった。
今後の瀬戸大也に立ちはだかる苦難とは?
日本水泳連盟が、瀬戸の代表内定をどう取り扱うか。今回の不祥事で、内定が取り消される可能性はある。また、今後の報道内容や自身の判断で、自ら内定を辞退する可能性も報じられている。そうなれば、もう一度、代表争いから始めなければならない。瀬戸の実力であれば難しくはないが、コロナ禍で日程が曖昧な最終選考会に向けて、一度調子の波を高める必要がある。本来なら、東京五輪本番にピークを合わせる強化日程に集中できたところにストレスがかかることになる。
そのためには、すぐにでも実戦の場に立ち、コロナ禍で失われた半年間のブランクを取り戻したいところ。だが、出場が予定されていた10月17、18日の日本短水路選手権、10月16日から11月22日までハンガリー・ブダペストで始まる国際リーグへの出場を回避する可能性が指摘されている。そうなれば、選手としての強化、調整に大きな遅れと狂いが生じるだろう。