人事畑出身者 vs 事業部出身者、事業部人事で活躍できるのはどちらか?池田潤(いけだ・じゅん) ヤフー株式会社 コーポレートグループ ピープル・デベロップメント統括本部 ビジネスパートナーPD本部 本部長。1999年早稲田大学卒業、株式会社日本交通公社(現JTB)入社。国内・海外旅行営業・企画業務を担当。2006年ヤフー株式会社入社、様々なサービスの営業・企画業務を担当。2012年経営改革のタイミングで人事本部組織開発室に異動し、理念浸透や制度改革を担う。2014年組織・人財開発部長に就任。2017年よりPD企画部長として制度企画、ダイバーシティ推進、働き方改革等を担当。2020年より現職。

中原 人材開発や組織開発にフィットするのは、事業部出身の人事の方々ということでしょうか?

池田 一概には言えませんが、これまでの体感としてそう思います。人事プロパーの社員はこれまでずっと、制度を作りこみ、それを確実に運用して社内の就労環境を整備していくことを主なミッションとして取り組んできました。それゆえ、考え方や仕事の進め方が、ややスタティック、つまり静的なところがあります。

 かたや事業部門にいた社員は、日々変化する事業環境に臨機応変に対応しながら仕事をしてきたので、移り変わる状況に応じて自分たちも変容していくことにあまり抵抗を感じない人が多い。

中原 変化に対するアドリブが効くわけですね。

池田 ええ。組織開発を進めていくと、組織内の人間関係や場の空気感はダイナミックに変化していくじゃないですか。そうした変化は、事業部門出身者にとっては慣れ親しんだ当たり前のことです。

 しかし、人事プロパーの社員は、それまで「正確さ」「公正さ」「確実さ」という基準を軸に仕事をしてきた方が多い。そのため、正解か不正解かはわからないけれども、変化しながらより適切なかたちを見出していこうという組織開発の考え方みたいなものは、感覚的にピンときにくいところがあるのかもしれません。

 もちろん人事畑が長い方でも、組織開発の目的や方法を理解し、実践している社員は大勢います。ですので、組織開発に対する適性を、人事プロパーか、事業部門出身かで一概に判断することはできません。ただ、労務管理や給与計算をずっとやってきた人が、いきなり事業部人事に配属されて、「事業部で起こる課題を解決する術を考えなさい」と言われても、少し戸惑ってしまうんじゃないかと思います。

中原 池田さんご自身は事業部出身の人事という立場ですが、事業部にいる社員で人事に行っても活躍できるのはどんな人材だと思いますか?

池田 事業運営に対する勘所に加え、事業部門における人と組織に対しての自分なりの課題を持っている人じゃないでしょうか。事業を進めていくにあたって、「個々の社員や組織としての力をもっと引き出せばパフォーマンスが上がるのに、どうしてできないんだろう」と常日頃からもやもやと考えている人は、事業部人事に向いていると思います。