企業の持続的な発展のために必要なことは…

 今回の対面形式(学生が社屋に通勤する形式)のインターンシップについて、ACEの栗原進事務局長は次のような見解を寄せた。

障がいのある学生が大企業のインターンシップで得たもの新型コロナウイルス感染拡大防止のため、インターンシップは広い空間で十分な間隔を空けて行われた

 「今年は、コロナの影響で、ほとんどの企業がオンラインでの展開となるなか、オフィスで職場体験ができることは、参加した学生にとって非常に有意義な機会になったと思います。実際に通勤して、朝の出社から夕方の退社まで企業で働くという1日を肌で感じることができ、先輩社員から仕事についての話を聞くことで、就業をより具体的にイメージすることができます。障がいのある学生がこうした機会をより得られるよう、ACEは今後とも尽力していきます」

 今年のコロナ禍における、ACEと会員企業の対面形式のインターンシップは、東京の凸版印刷だけではなく、京都の堀場製作所(京都府京都市)でも行われた。こちらは、聴覚、精神・発達に障害のある学生5人が参加し、グループワークや堀場製作所の製品を用いた実験、先輩社員へのインタビューなど、同社ならではのプログラムで学生の就労意識を高めたようだ。

障がいのある新卒者が企業の戦力になっていく

 民間企業で働く障がい者は56万人を超え(厚生労働省、2019年公表)、過去最多を毎年更新している。法定雇用率は、来年2021年3月1日から、民間企業で2.2%から2.3%に上がる予定で、障がいのある従業員の活躍の場はますます増えていくはずだ。障がいのある新卒者が企業の戦力として成長していく姿は、インクルーシブ社会の映し鏡になるだろう。そして、ACEと会員企業によるインターンシップ は、障がいのある学生が社会に出る前に“自身に合った働き方”を的確に見いだすものであり、来年度以降の推進も注目に値する。

 「障がい者雇用は“個人の強みを適材適所で生かす”という点において、特に、職場の従業員が理解に努めたり、協力し合わなければ難しい面があります。しかし、従業員の一人ひとりの気づきが、誰にとっても“働きやすい”職場環境を作り出します。そこから、職場の多様性が生み出され、個々の能力を生かす“ダイバーシティ&インクルージョン”につながっていくはずです。企業が今後も持続的に発展していくためには、多様な人財の活躍が欠かせないと考えています」(凸版印刷株式会社・人事労政本部・藤﨑実生さん)

※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」の記事に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。