ウイグル問題、ユニクロの優れた回答

 ウイグル協会の質問状に対して、パナソニックだけは「1社のみ未回答」となったが、回答した企業の中でもその内容は千差万別だ。

 今回の調査の中で、最もしっかりと回答できていたのは、ユニクロを展開するファーストリテイリングだろう。同社は新彊ウイグル自治区内での生産がないことや、豪ASPIの報告書内で自社と関連付けられている企業との間に取引がないことを明確に伝えた上で、自社の人権ポリシーを説明。さらに今後、より高い視点で人権問題について自社内でも調査を実施することを宣言している。

 他方、一応回答したものの、何とも心もとないのが日立製作所だった。「自社は行動規範や人権方針に沿って行動している」という宣言だけがメールで短く書かれており、今回の豪ASPIの報告内容への言及はなし。ウイグル自治区での人権侵害への該否については答えていない。

 果たしてこの違いは、回答を作成した担当者の能力による違いなのだろうか。答えは否。これは、それぞれの企業の、人権問題や自社サプライチェーンにおけるリスクに対する感度の違いだと私は考えている。

 企業がホームページなどに掲げる「人権方針」にはほとんどの場合、美辞麗句が並んでいる。だが、魂は細部に宿る。ここで言う「細部」とは、今回のウイグル問題に対してきちんと回答できるかどうかだ。

 社内でリスクを事前に把握しているなら、ウイグル問題についての問い合わせがあれば、簡単に回答することができるだろう。一方で、ウイグル問題そのものを知らなかったり、慌てて社内の状況を確認したりするようなレベルでは、質問に詳細には回答できないはずだ。結果、問い合わせには曖昧で素っ気ない回答を送らざるを得ない。

 東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、新彊ウイグル自治区の人権侵害の実態と日本企業の関与について20年8月28日に会見を開いた。この中でも、ウイグル協会からの質問にパナソニックだけが未回答だったことや、日立製作所などの回答が不十分だったことが明示された。

 こうした企業の人権対応や情報開示の姿勢が、ゆくゆくは企業価値に影響を与えるのは間違いない。

 日本企業が人権対応で海外企業に劣後しているという課題に、経済産業省は強い関心を寄せている。そしてこの秋、ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)が日本でも公表される。これに対する準備の仕方によって、人権に関する経営の感度の差が、さらに広がっていくだろう。

 米トランプ政権は20年9月14日、新疆ウイグル自治区にある5つの事業体からの輸入を禁止する方針を示した。これら企業などから綿花や繊維製品、衣料品、ヘア製品、コンピューター部品が、米国へ禁輸となる。今まで感度の低かった企業にとっても、「人権」はいよいよ、避けては通れない重要なテーマとなるのだ。