返還期限の猶予を求めない人は
支払能力があるのか?

 Aさんのような月々の返済に困っている人に対して何百万円を耳をそろえて払えという繰り上げ一括請求。その法的根拠は、請求書や訴状によれば、日本学生支援機構法施行令5条5項だ。Aさんの事件の訴状から引用する。

「日本学生支援機構法施行令5条5項の定めにより、割賦金の返還を怠った者に対しては、原告が指定する期日までに返還期日未到来分を含む返還未済額の全部を一括して返還させることができる定めである」

 返済が遅れたら一括請求されてもやむを得ない――これだけ読めばだれでもそう思うだろう。だが、実はこの「施行令5条5項」の説明は不正確だ。原文はこうだ。

「学資貸与金の貸与を受けた者が、支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは、前各項の規定にかかわらず、その者は、機構の請求に基づき、その指定する日までに返還未済額の全部を返還しなければならない」

「支払能力があるにもかかわらず」「割賦金の返還を著しく怠ったと認められる」ことが一括請求の前提条件であると明記している。つまり、何百万円もの返済を一括でするだけの財産を持っているのに分割金の返済をしない、そういった特殊な例を想定した条項ではないだろうか。

 Aさんは経済的な困窮から月々の返還ができない。支払能力はない。だから本来5条5項の適用は本来できないはずである。なぜこんなことがまかり通るのか。