「Junction」の作詞・作曲・編曲家が渋谷森久さんと岩谷時子さんの人脈でそろっていたのと同じように、「晴れときどきくもり」の陣容の多くは牧田和男さんの人脈で成立しているようだ。

「Junction」は現在でもiTuneで購入できるが、残念ながら「晴れときどきくもり」はCDも廃盤、配信でもカタログには今のところ存在しない。しかし、2004年に発売されたベスト盤「LIFE」(ユニバーサル)に(2)(4)(6)(7)(8)(11)の6曲が収録され、シングル(4)のカプリング曲でアルバムには収録されなかった「あなたとI love you」(詞曲・本田美奈子)が入っているので、半分は現在でも聴くことができる。

70年代シンガーソングライターの時代

 ディレクター牧田和男さんが選んだ作家は、岩谷時子さんを除いて1950年代から60年代生まれである。「Junction」は1930年代から40年代生まれの作家が多い。牧田さんは1955年生まれだから、同世代か少し下の世代を集めたことになる。ひとことで言えば、シンガーソングライターの世代だ。

 きわめてプロフェッショナルな作曲家や作詞家で固めた「Junction」とは正反対で、アマチュアのシンガーソングライターからプロに進んだ世代による作品である。彼らはプロなのに、いつまでもアマチュアっぽさを捨てられない世代だともいえよう。本田美奈子さん自身もシングルを含めれば2曲の詞を書き、1曲を作詞作曲している。

 牧田和男さんは、作詞・作曲・編曲、そしてベース、ギター、キーボードをこなすミュージシャンでもある。プロデューサーの中橋さんがディレクターにミュージシャン出身の牧田さんを指名した時点でアルバムのキャラクターは決まったといえよう。

 「美奈子には最初に、すべての打ち合わせに参加し、ひとつずつ手作りで曲を仕上げることをお願いしましたが、全部受け入れてくれました」(牧田さん)

 どうしてそのような要求を?

 「一生歌手でいたい、70歳まで歌いたい、と言うのです。とすると、ただ出来た曲を歌うだけでなく、すべての音楽家と共通言語で話し合う必要があるでしょう? そのためには創作の一からすべての段階に参加したほうがいいと考えたのです」(牧田さん)

 このアルバムの制作は95年2月に始まっているが、当時、本田美奈子さんはこのようなコメントを残している。

 「私は歌うために生まれてきたと思っています。一人でも多くの人の心を動かせればいいな」(本田美奈子「毎日新聞」1995年2月12日付)

 人生を歌にかける、という決意で、これ以降頻繁に語っているが、同じことを牧田さんには「70歳まで歌いたい」と言ったのだろう。

 でも、どうして創作を? と牧田さんへ質問を重ねる前に、彼の音楽家人生をたどる必要がある。