その意味では、不況期には赤字企業でも非効率企業でも、ゾンビ企業でさえも、大きな存在意義があるのである。生きているだけで雇用を生み、失業の増加を抑制して景気悪化のスパイラルを押しとどめる力となっているのだから。

 そうしたことを理解した上で、なおかつ中小企業の淘汰を主張するのであれば、それは「病人は体が弱いから病気になるので、病気にならないように筋トレをして体を鍛えよ」というのと同じ議論である。相手が病気だろうと健康だろうと構わず、「体を鍛えろ」と言い続けるわけである。

 筆者なら「病人は、体力が弱っているのだから、ゆっくり休養して体力を回復して病気に打ち勝て。ただし、治癒後には筋トレを真面目にやれ」と言う。その方が状況に応じた対応であり、遥かに合理的だと考えるからである。

中小企業の効率化は景気回復により実現すべき

 中小企業の効率化は、景気が回復すれば自動的に達成されるという認識が重要である。まずは稼働率の向上により、次に省力化投資により、次に労働力移動により達成される。

 まずは、景気が回復すれば稼働率が上がる。たとえばホテルの従業員の労働生産性は来客数におおむね比例するであろうから、景気が回復して来客数が増えれば(多忙により従業員数を増やす必要が出てくるまで)生産性は上昇するのである。

 景気が回復すれば労働力不足となるから、各社が自発的に省力化投資に励むようになる。日本の飲食店の効率化が進まなかったのは、バブル崩壊後の長期低迷期に労働力が余っていたため、自動食器洗い機を購入するインセンティブが乏しかったからだ。新型コロナ不況前のアベノミクス景気が続けば、自動食器洗い機の導入件数が増えて、飲食業が効率化していたはずである。