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航空大手のANAホールディングスは今期5100億円の最終赤字を見通した。惨状にもかかわらず、同時に明かした構造改革は「美しいリストラ」。そうなったのには理由があった。(ダイヤモンド編集部 臼井真粧美)

 ANAホールディングス(HD)が過去最悪の5100億円の最終赤字を見込む決算と併せて公表した構造改革は、おどろおどろしいリストラ策を極力抑え、美しく描かれた。

 コロナ禍で大打撃を受けた航空会社が、リストラでやるべきことは基本的に決まっている。固定費の多くを占める航空機と人員を減らすことだ。しかし、ANAHDはここにLCC(格安航空会社)新ブランドの立ち上げをかぶせ、成長戦略を示してみせた。

 その実、新LCCもリストラの役割を担うものだが、美しく演出された。リストラの実態はどんなものなのか。

 ANAHDの2021年3月期第2四半期までの中間決算は売上高2918億円で前年同期比72.4%減、純損益は1885億円の赤字になった。通期予想は売上高7400億円で前期比62.5%減、純損益は5100億円の大赤字である(表参照)。

 固定費削減のリストラ策として、航空機を約30機退役させ、前期末時点で300機超あったものを今期末には276機まで減らす。

 一方で派手な人切りは避けた。退職金割り増しによる早期希望退職を年末まで募集しているが、13年度に実施した際に応じたのは40人ほど。社内では今回もせいぜいその規模だろうとみられており、形ばかりのものになりそうだ。