4.3兆円もの巨費を投じてNTTドコモを完全子会社化するNTTに対し、KDDIやソフトバンクなど大手通信会社の警戒がピークに達している。早ければドコモのTOB期間内に「待った」の意見をとりまとめる方向だ。総務省を巻き込んで公開の場で是非を問う考えだが「巨大NTTへの回帰」に歯止めをかけるのは難しい現実がある。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
KDDIとソフトバンクが
総務省に異議申し立てへ
「これまでの審議会や政府の決定では、分割によってNTTドコモのシェアを薄くしていくという方向であったはず。急転直下の方針に驚いている」
10月16日、NTTによるドコモ完全子会社化について強い口調で異議を訴えたのはKDDIの高橋誠社長だ。NTTの巨大化について「政策議論がないまま進んでいる」という現状の懸念を表明した。
KDDIは通信業界に競争をもたらすために設立された「第二電電(DDI)」のDNAを脈々と受け継ぐNTT対抗軸の急先鋒だ。過去にも事あるごとに「NTTグループの資本分離」を繰り返し訴えてきた経緯がある。
資本分離とは、NTTの持ち株会社を廃止してNTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、ドコモのすべての傘下会社の資本を完全に分離すべきとする考え。だが、今回のドコモ完全子会社化はそれとは真逆の方向の「NTTの再結集」。その警戒心を高橋社長はあらわにした格好だ。
NTTの巨大化を懸念するのはKDDIだけではない。ソフトバンクをはじめ複数の通信会社も公正競争を阻害するとの疑念を募らせている。
関係者によると、KDDIとソフトバンクはじめ複数の通信会社は、総務省に対し、ドコモ完全子会社化の異議を申し立てる方向で準備に入った。早ければ、11月16日に終了するドコモTOBの期間内に「待った」の意見を表明する方向だ。
NTTと競合する通信会社が今回のドコモ子会社化に異議を唱える根拠はどこにあるのか。