2020年に商用化される5G。次世代の産業インフラの通信エリアを広げるため、通信キャリアは基地局整備を急いでいる。産業での活用が本格化するのは22年がめどになりそうだ。特集「5G大戦」(全11回)のVol.07では、新時代の通信インフラ整備の状況を取り上げる。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
「5Gの技術者は1万人超。ドコモグループの総力を結集して進めていく」。NTTドコモが9月18日に開いた5Gに関する説明会。吉澤和弘社長は、5G基地局の整備を前倒しで進めていく方針を表明した。
総務省が4月に認定した5Gの基地局開設計画によると、ドコモは2020年春に商用サービスを始め、21年3月末までに全国47都道府県の全てに基地局を配置することになっていた。この計画を9カ月早め、20年6月末までに配置を完了させることにした。
また、全国の基地局数が1万局に達するのは21年6月末として、当初の予定を1年9カ月早める。24年3月末までに2万6334局という計画を大幅に前倒しして、5Gの通信エリアの整備を急ぐ方針だ。
KDDIは20年3月に5Gの商用化に入る予定。22年3月末までに約1万局、24年3月末までに5万3626局を整備する。メインの基地局ベンダーに韓国のサムスン電子を採用しており、サムスンが開発した1台当たりのコストが低い小型基地局を大量配置して、カバーエリアを広げていく計画だ。
ソフトバンクは、「24年3月末に1万1810局を設置」という計画を、23年3月末までへと1年前倒しした。早期に5G基地局を整備して産業での活用を促す。
基地局整備に当たり、総務省は4Gまでは「人口カバー率」を高めるよう通信キャリア各社に求めてきた。一方、産業での活用が見込まれる5Gでは、人の住まない地域にも電波が必要だと判断。そこで、全国を10キロメートル四方の約4500区画に分け、基地局が設置された区画の割合を示す「基盤展開率」という新基準を採用した。
新基準での各社の24年の目標は、ドコモは97%で、ソフトバンクは64%となっている。ただし、この基準は、区画の中に5G基地局が一つでもあれば1区画とカウントされるため、仮に100%であっても全国の隅々で5G通信が利用できるとは限らない。