不動産の呪縛#4Photo by Masami Usui

西武鉄道を擁する西武グループは9月、埼玉県の所沢駅東口で駅ビルを全面開業した。開発はこれで終わらない。次は広大な敷地が広がる駅西口だ。コロナ禍で鉄道業界が危機に陥っているさなかでも、西武グループには所沢での開発を「止められない」事情があった。特集『不動産の呪縛』の#4では、西武グループの郊外エリア開発の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、松野友美)

臨時休業で静まり返るわびしさと
コロナさなかの大詰め工事の不安

 埼玉県の所沢駅東口に2018年に開業した駅ビル「グランエミオ所沢」は今春、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令されたのを受けて臨時休業した。

 そのさなか、西武ホールディングス(HD)の子会社で不動産事業を担う西武プロパティーズの川上昇司開発事業部マネジャーは、このビルを駆けずり回る日々を送っていた。18年に開業したのは1期のエリアで、残る2期のエリアが工事の追い込み段階にあったからだ。

 川上氏の胸中は、静まり返っている1期エリアを見てわびしさが募るとともに、2期の工事の大詰めを乗り越えられるかの不安に駆られていた。7年間身を捧げてきた開発プロジェクトのクライマックスはあまりにも想定外のものだった。