決算報Photo by Tomomi Matsuno

JR本州3社における規模の序列はJR東日本、JR東海、JR西日本の順で定着してきた。しかし、2021年3月期通期予想でこの序列が崩れる。売上高見通しでJR東海がJR西日本を下回り、3社中で最下位になったのだ。利益の序列はまた別の異変が起きており、これが3社の経営課題を浮き彫りにしている。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

3社通期売上高予想はJR東トップ
JR東海がJR西を下回る

 外出自粛や海外からの訪日客の蒸発、一時期の駅ビルや商業施設等の店舗閉鎖などコロナ禍の影響が鉄道会社を苦しめている。JR東日本(以下、JR東)、JR東海、JR西日本(以下、JR西)の3社とも2021年3月期中間決算(20年4~9月)は売上高が激減し、大赤字となった(下表参照)。

 通期予想も各社が民営化後最悪の水準で売上高激減、大赤字となるが、その中身は各社ひとくくりには語れない。売上高は前期比でJR東が48.2%減、JR東海が64.6%減、JR西が48.8%減となり、JR東海が最も落ち込む。これにより売上高規模の立ち位置は従来のJR東がトップ、その下にJR東海、その下にJR西という序列が崩れ、JR東海がJR西を下回り最下位となる。

 各社とも運輸業の方が非運輸業よりも売上高の落ち込み幅が大きかった。従って運輸収入への依存度が大きいところほど、全体の売上高も落ち込んだ。20年3月期時点で、JR3社において売上高に占める運輸業の割合を見ると、JR東は約63%、JR東海は約70%、JR西は約51%(いずれも事業セグメント間の調整前で計算)。運輸収入への依存度が最も高いJR東海が最も売上高を落としたのである。

 運輸収入は新幹線、在来線の二つに分けられる。20年3月期時点で新幹線の割合はJR東が3割強、JR東海は9割強、JR西は5割強で、JR東海が飛び抜けて高い。そして3社の中間期の運輸収入を見ると、前年同期比で新幹線がおよそ7割減、在来線が4~5割減、とりわけ新幹線の落ち込みが大きかった。新幹線収入一本足ともいえるJR東海が売り上げで最も痛い目に合うというわけだ。

 もっとも、利益の序列では、売上高とは別の異変が起きている。