大詰めの米国大統領選で、「隠れトランプ支持者」が増えていると言われている。その1つの原因が、10月22日に行われた最後の討論会だ。トランプ大統領とバイデン候補のいかなる発言が呼び水となったのか。米保守系シンクタンクのヘリテージ財団元上級研究員で、『隠れトランプのアメリカ』(扶桑社)を上梓したばかりの横江公美・東洋大学教授が、大統領選の動向について分析する。バイデン候補が有利と言われる中、4年前の大統領選のように、「まさかのトランプ逆転」が起こらないとも限らないのだ。(東洋大学教授、元ヘリテージ財団上級研究員 横江公美)
世論調査はアテにならない
トランプが勝利を手繰り寄せた討論会
選挙の結果は最後の最後までわからない。世論調査ではなおもバイデン候補に対して7ポイント近く後れを取っているトランプ大統領だが、数字がアテにならないのは前回大統領選挙からも明らかだろう。
特に、今回の大統領選挙はコロナ禍に揺れる中での選挙戦である。コロナ対策のマズさを自身の感染というかたちで身をもって証明してしまったトランプ大統領に対する逆風は強まったが、10月22日(日本時間10月23日)に開催された最後の討論会で、トランプ大統領は勝利を手繰り寄せることに成功したと見る。
あのとき、明らかにバイデン候補は慌てていた。その証拠として、討論会の最中に時計に目をやるバイデン候補の様子が、トランプ支持者らの手によってSNS上で拡散した。
トランプが再選するために、最も重要な州はアメリカ北東部のペンシルベニア州である。かつて製造業で繁栄したラストベルトに位置し、労働組合員の多さから民主党支持者が多い“青色州”だった地域だ。
同じくラストベルトに位置する隣のオハイオ州の選挙人が18人、ミシガン州が18人なのに対して、ペンシルベニア州は20人。2016年に民主党が死守したイリノイ州と並ぶ、ラストベルト内の大きな票田である。2016年の大統領選挙では、「ラストベルトの繁栄を取り戻す」とアピールすることで、ペンシルベニアを赤色州に塗り替えて見せたトランプ大統領だが、今回の選挙で死守できなければ、再選が遠のくと見られている。