『鬼滅』大ヒットの恩恵は
原作者にちゃんと還元されているか

 さて3つ目に、これはあまり触れられていない話題でもありますが、私自身の疑問を提示したいと思います。映画『鬼滅の刃』の大ヒットの恩恵は、原作者の吾峠呼世晴先生にきちんと還元されるのでしょうか。

 これは、「作者個人の話なのだからそっとしておいてあげたほうがいい」という意見があることを、十分承知したうえでの問題提起です。ひょっとしたら、ここできちんと声を上げておいたほうが日本の漫画界のためにはよいかもしれないと思い、あえて1つの社会問題として取り挙げたいと思います。

 日本映画史上最速で興収100億円を突破し、日本最高記録である『千と千尋の神隠し』が記録した308億円を超えるかと予想されている『鬼滅の刃』ですが、映画の大ヒットで主に潤う会社は3社だといわれます。

 アニプレックス、集英社、ufotableがそれで、従来のアニメ作品のようにテレビ局や電通、映画会社などが制作委員会に入らない変わった方式になっています。これはもともと今ヒットしている劇場版が、アニメ第一期の続編として制作されたことが理由だとされています。

 そこで、本作の個別の事情は契約書が公開されているわけではないので細部はわからない、という前提で問題提起だけさせてもらいます。日本映画のビジネスモデルに関する大人の事情として、原作者にはあまりというか、ハリウッドと比較すればすずめの涙ほどの原作料しか支払われていないという現実があります。

 このあたりは、吾峠呼世晴先生個人のスタンスとして触れてほしくない、という気持ちがあるかもしれません。あくまで『鬼滅』ではなく、アニメ業界全体への問題提起として聞いていただければと思います。アニメ『銀魂』作者の空知英秋先生が、『銀魂』51巻の読者と触れ合う質問コーナーに、こんなヤンチャな言葉を寄せています。

「映画というのは、どれだけ観客が入ろうと、どれだけ興収をあげようと、作家の懐には何も入ってきません。最初に原作使用料というものが支払われるのみです。全体の興収からいえば、ハナクソみたいな額ですね」