文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間。『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。AKB48の前田敦子さんを佐藤健さんがお姫様抱っこしたスクープ写真は大反響を呼んだが、なんと新人記者のビギナーズラックだった。(元週刊文春編集長、岐阜女子大学副学長 木俣正剛)
新人の真面目さが
まさかの大スクープを生む
週刊誌の世界に限りませんが、ビギナーズラックは存在します。
私の記憶に残る文春新人のスクープといえば、俳優の佐藤健さんがAKB48の前田敦子さんをお姫様抱っこした現場写真です。2012年の出来事でした。もちろん、私の退社後も新人たちはいっぱいスクープしているかもしれませんが、これは衝撃的でした。
このころはAKB48の全盛期。しかも、交際禁止が前提のAKB48でセンターを張っていた人気絶頂の前田敦子さんがベロベロに酔って、佐藤健さんに抱かれながら自宅に入る姿がカラーで掲載されたのですから、大評判になりました。
このスクープは、いわば「出来立てほやほや」の新人君のスクープでした。
時期は9月。文芸春秋社ではたいてい新人を週刊誌に配属させます。なので、数人の新人が編集部にはいましたが、彼はセクション班という連載を担当するチームにいて、1週間前に、いわゆるスキャンダルを書く特集班に転属になったばかりでした。
この手の新人に、いきなり難しい仕事は渡せません。その日は、「前田敦子さんが自分の本の出版イベントでサイン会を開くので様子を見てきてください」というのが、新人くんへの指示でした。