ワクチン写真はイメージです Photo:PIXTA

新型コロナウイルス感染症のワクチン開発競争が激しさを増している。近い将来、開発に成功してワクチン接種が始まるだろう。しかし、過去にない異例な早さでのワクチン開発は、未知の健康被害のリスクも高めている。現在の日本の「健康被害救済制度」には問題点があり、「新型コロナワクチン訴訟の多発」を招きかねない。被害者への確実な補償と国民への安定的なワクチン供給を将来にわたって担保するためにも、今こそ見直す必要がある。(ナビタスクリニック理事長、医師 久住英二)

訴訟多発は
ワクチン供給を不安定にする

 新型コロナワクチン開発競争が激しさを増す中、世界的医学雑誌『New England Journal of Medicine』(10月28日付)に、ワクチン禍への無過失補償を求める論考が掲載された。

「世界中に供給されるワクチンの場合、非常に安全な製品であっても、発作やアレルギー反応などの重篤な有害事象のリスクは避けられない」

「新型コロナワクチンが被接種者に健康被害をもたらした場合に、潜在的かつ実質的な責任から企業を保護することが大事だ。製薬企業は、法的責任からの保護なしに、調達契約またはワクチンの出荷に同意しないだろう」