ジョー・バイデン氏の当選が確実となった米大統領選挙だが、人種差別や経済格差を巡るドナルド・トランプ大統領の支持派と反トランプ派の対立は続く。長年差別に苦しんできた黒人たちもまた、トランプ大統領の敗北を素直に喜んでいるわけではない。米国・ボストン在住の日本人の報道写真家として、現地取材で感じた米国社会の実態をリポートする。(報道写真家 廣見恵子)
超保守的な田舎のコミュニティー
全米最初に始まる投票の結果は?
米大統領選挙は民主党のジョー・バイデン前副大統領が当選を確実にし、すでに政権移行に向けた動きを加速させている。
一方で現職のドナルド・トランプ大統領側の陣営は、投票に不正があったとして提訴するなどの動きを見せている。だが、日本を含めた主要国の首脳がバイデン氏に祝意を示す声明を発表し、電話会談を始めるなど、バイデン氏への政権移行の流れができつつある。
米国史上過去最多となる1億6000万人以上の有権者が投票したとされる今回の大統領選は、11月3日の投票からバイデン氏が勝利宣言した7日まで、5日間を要するほど大接戦であったことは確かだ。
結果が確定しつつある中でもなお、トランプ氏だけでなくその熱烈な支持者の間に敗北を認めない動きが根強く残っていること自体が、米国社会にもたらされた深刻な分断を物語っているといえる。選挙戦の取材で米国民のさまざまな事情を聴く中で、そうした側面を感じることができた。
米国北東部、カナダとの国境に一部が接するニューハンプシャー州ミルスフィールドにあるログハウス造りの小さなバーで、それは始まった。
「……3、2、1、さあみんな、投票する時がきた!」――。投票日である11月3日午前0時、この地域の代表であるウェイン・ウルソ氏によるカウントダウンで、“midnight voting”(ミッドナイト投票)が始まった(下写真)。投票日の午前0時に始まるため、米国で最も早く行われる大統領選挙の投票となる。